ハンドルネーム ya
某公立学校通級指導教室担当教員
言語聴覚士
特別支援教育士(S.E.N.S)
性別 男
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今から9年前、言語障害教育関連の研究会に全員で出席することに
管理職や一般の先生方の理解を得られない事態が発生していました。
9年前だけでなく、今でも、そうした話をちらほら耳にし、
最近も、人事を含め、理解されていない話を聞きました。
「通常学級と同じように、担当は毎年替わるべきだ」
「通級の専門性と言うが、通常学級担任も専門性は必要であり、同じだ」
これらの不理解の背景には、通常学級の人事とプールで行っている、
という制度上の問題もあります。
「養護教諭」と同じように、免許や採用段階から別枠であれば、
こうした不理解は生じにくいかもしれない、と思います。
実際、そうでなければなりません。
現在の人事システムのあり方の側がおかしいのです。
言語障害教育の専門性を保障する研修養成機関が全く不十分であるということは、文部科学省も認めているところです。
以下、9年前当時、管理職や一般の先生方への説明資料として作成したものがあります。以下、一部抜粋して引用します。
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1 ことばの教室の研修についての基礎的理解
(1)ことばの教室の業務は、医療的な知識も含めた、教員免許の取得できる大学では学べない知識が必要であり、教室の担当になってから初めて研修しなければならない。この点で、普通学級の教員の研修とは質的に異なるものである。
(2)全国的に見ても、教員免許の単位と、言語障害教育の知識を履修する単位の両方を取れる大学はほとんどない。また、その業務の特殊性にも関わらず、普通学級の教員の人事と同じ枠でことばの教室の人事を行うという問題が未解決である。ことばの教室では、高度な専門性が必要であるにも関わらず、養成機関が全く未成熟である、という基本的認識に立たなければならない。旧文部省、現文部科学省も同じ見解を諮問機関を通して表明している。
(3)他市町村の「ことばの教室」の研修旅費については、普通学級の予算枠とは別に、複数の市町村がお金を出し合い、独自の枠で研修旅費を立てている。これは、ことばの教室が他の市町村の子ども達も利用するという「通級制」という開放性の実状に合わせたものである。
(4)これらのことから、普通学級と同じ考え方、ことばの教室が「学校の一部」という考え方は、ことばの教室の特殊性を無視したものである。
(5)研修会への参加の仕方について、「全員が参加すべきでない」としている教室は、他に例がない。また、公的調査によると「全職員が参加できる教室の割合」は、毎年80~90%以上である。しかも、参加を断念する教室については、担当者が通級児の指導を休めないと判断したものであり、「普通学級と同じ扱いにしなければならない」という理由で参加できない教室は、皆無である。
(6)一部の担当者が参加して、参加できなかった担当者に後日環流すればよいとか、研修図書を読めば参加しなくてもよい、とも言われる。しかし、口腔内のビデオ撮影は文書では環流できない。また、難解な用語を理解するためには、本を読むだけでは全く足りない。そうではなく、ことばの教室担当者の養成機関は全く未整備である、という基礎的理解に立たなければならない。
(7)研修中の指導の振り替えについては、過去の確認通りに進めているし、親御さんからも苦情は一切ない。時数よりも、むしろ「質」については、様々な苦情が出ている。
2 ことばの教室担当者の研修を巡る国内情勢
(1)文部省調査研究協力者会議第2次報告(98.10.21)「特殊教育の改善充実について」
→ 言語障害の専門性の確保については、研修制度で対応してきたが、養成・免許制度の側面からの対応が不十分。
(2)教員養成系で言語障害の専門課程を卒業した担当者はごくわずか。
(3)通級学級に関する調査協力者会議「通級による指導に関する充実方策について(審議のまとめ)」
平成4年3月30日
→ 「通級による指導を適切に行うため、市町村や校内の力量を養うための研修の充実が必要」
(4)「言語聴覚士」の国家資格化により、病院内の「医療ST」と「学校のことばの教室ST」が同レベルで専門性を問われるようなったこと。
(5)文部科学省諮問機関最終答申(2001.1.15)でも、通級制担当教員に対する市町村レベルでの研修のフォローの重要性、養成機関の未整備について厳しく指摘した。
3 通級制担当教員の研修についての文部省方針
「通級による指導が教育効果を上げるためには、何よりも担当教員の資質が重要となります。なぜなら、通級による指導は、限られた時間の中で1対1の個別指導が中心になるため、(中略)期待された教育効果を上げることができなければ、通級の意義そのものを問われることになります。
(中略)
・・・なお、通級による指導は・・・高度の専門性が要求されるので、特殊教育諸学校の教員免許を所有している教員を充てるなど指導力のある教員をその担当とするなどの配慮が必要になります」
『通級による指導の手引き』文部省特殊教育課内特殊教育研究会 第一法規出版
4 親の会の声
「・・・当事者の先生もお気の毒ですが、最大の被害者は子ども達ということになってしまいます。この原因は、第1に制度上『小・中学校教諭普通免許状所有者なら言語障害教育もできる筈』という建て前になっているからであり、第2には、人事異動に関して、6~10年以上の同一校勤務または同一障害種別担任を認めない都道府県ごとの内規があって、それを頑なに守ろうとすることによります。現実には、何の知識も無しに言語障害教育に就任した先生は何をどうすればいいのか困惑し、十分な指導ができないという例が多いことは、各種の調査・統計が物語っています。」
『全国言語障害児をもつ親の会 ことば』No.188号 1999.12.8 より引用
5 研究団体調査
(1)一教室一担任で困っている内容は?
・教室内で研修できない 59%
・ケース会議ができない 44%
・悩みを相談できる人がいない 44%
6 これまでの話し合いの経過
・(研修で指導が欠ける場合の振り替えについて)→ 親や子どもと話し合った上で可能な範囲で振り替えるよう努める。(1998年9月5日確認)
・(地教委の回答)ことばの教室の研修の大切さはわかる。どんどん参加して研修を深めるのは良いのではないか。ただ予算は計画的に執行して欲しい。
・(地教委の回答)「現場の苦労は分かっている。親から(時数が欠けることについて)苦情は上がってきていない。親の会とも話し合って理解を得て進めることについてはその通りだと思う。」
7 関係者発言
(1)「地域の研究団体は、地域の言語治療教育の質的レベルの維持に重要」(全国組織幹部)
(2)地域研究会会長(管理職)の公式発言主旨(1999.11)
「私は、ことばの教室のある学校で勤務したことがあるので、ことばの教室のことはよくわかる。研修は過程が重要だ。ことばの教室のような専門性の高い仕事は、本を読むだけではわからない。集まって協議することが重要だ。『側音化構音障害』の指導に7年かかったという話を聞いた。教育の本質がここにある」
8 その他
(1)親の会は、指導時数よりも「質」を問題にしている。2年前親の会が、「質」の問題で一触即発の事態に至った経緯を知るべきである。
(2)私たちは、「旅費」の増額を要求していない。お金よりも、全員が参加できることを優先しているためである。したがって「予算がないから、全員参加できない」と言うことはできない。
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今の私にできること。
・通級担当を1年でも長く続けること。
・新しい先生への支援を本気で進めること
・通級担当の専門性の理解のために、様々な活動を行うこと
『構音の指導研修DVD』にしても、それらは私の自己顕示欲、地位欲のためでなく、
永く苦しい道のりを経て来て、それらに応えるために、
今しなければならないことを形にしたものの一つです。