ハンドルネーム ya
某公立学校通級指導教室担当教員
言語聴覚士
特別支援教育士(S.E.N.S)
性別 男
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言語聴覚士関連の研修会の案内を頂いたので、聴いてきました。
発達性読み書き障害を中心とした症例と指導法のお話でした。
音韻意識をはじめとした、音韻性の読み書き障害と、視知覚などの視覚性の読み書き障害の典型例でした。
読み書きに困難があると、みんな「ディスレキシア」と呼んでしまう現場の混乱がありますが、知的な遅れがないことがディスレキシアの前提です。また、状態像等の横の情報と、生育歴などのタテの情報、そして諸検査などから、初めてディスレキシアと呼べるわけです。
今回の発表は、WISCやRCPM(レーブン色彩マトリクス検査)などから、知的な遅れがない子をピックアップしていて、PDDのある子などは研究から除外しているそうです。だから典型例ばかりだったわけですが、教育現場の人間としては、むしろ典型例の方が少ないと感じていました。
つまり、聴覚情報処理とか視覚情報処理や短期記憶の問題だけで,LDを説明しようとすること自体が、現場からは乖離しているわけです。神経心理学だけで、しかもその一部の概念だけで、LDの説明はできないのであります。
今回の発表では、典型例だけを扱っているということもあり、知的障害やPDDがないことが前提なので、「読解」「言語概念」「語彙学習」、そして「意欲」の問題はどちらかというと軽視されている印象でした。
療育関係のSTも、実際には様々な要因が重なっている、という実感を持っているようです。
子どものLDと、成人後の脳損傷後の失語症とは違う、という最大の点は、子どもは発達していくという部分なので、よりトータルに子どもの力を理解する必要があると普段感じています。それもあって、ますます典型例というのは少ないです。
「LDは、失語症のひとつである失読失書と同じでしょうか?」という質問が参加者から出ていましたが、LDにも様々なサブタイプがあり、子どもの発達と、脳損傷とはイコールではない、と思ってしまいましたが、講師も同様の見解のようでした。この点、異論のある方はいないと思います。
ワーキングメモリがLDの原因ではとの質問もありましたが、ワーキングメモリはあらゆる機序を含めてしまう便利な用語であって、LDだけでなく発達障害全体に言えるので、それ自体は説明や支援につながらない、という指摘もある程度その通りと思いました。そればかりか、結晶性知能、心内辞書など、ワーキングメモリ以外のことも検討する必要があるのでは、と思いました。
○○くんは、○○障害→○○障害の原因は、△△→△△を克服するには、××の指導法
とやってしまいがちになりますが、そうではなくて、
○○君→○○くんの特性の理解→○○くんへの指導法
でなければならないのだと思います。