ハンドルネーム ya
某公立学校通級指導教室担当教員
言語聴覚士
特別支援教育士(S.E.N.S)
性別 男
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今度、側音化構音の指導についての講義をすることになっています。
側音化構音(そくおんかこうおん)とは、例えば、「キ」が「チ」のように、「ギ」が「ジ」のように、「リ」が「ギ」のように、「シ」が「ヒ」のように、イ段の音が歪んでいることを言います。
エ段や、たまにサ行、ザ行でも見られることがあります。
「キリギリス」が「チギジギス」などのように、聞き手にとってはわかりにくいです。
特に、それらの音を含む固有名詞、人の名前など、聞き手が初めて聞く単語では、困り感が生じることがあります。
子どものうちは問題ないと思われても、思春期に入ってから悩む当事者の方も少なくありません。中学生以降では、側音化構音を指導してくれる機関はほとんどなく、成人してからは仕事で忙しいなどの理由で医療機関を受診することも難しくなります。
話しことばに困難があるというのは、周りの人の想像以上に、本人の困り感が実は大きくなりやすいのです。
今回の研修会にあたって、事前に質問のアンケートをとったところ、構音検査の仕方を教えてほしいというのがありました。
新しい先生方は、側音化構音を含めた歪み音の指導の仕方という以前に、そもそも構音障害とは何か、どのように評価をしたらいいのか、というところで迷われています。
その意味で、短い時間の中で、いきなり歪み音の指導というのは難しいと思われました。
ただ、歪み音の中でも、一番接することが多いのが側音化構音であることも事実です。
きっと、指導に苦労されている先生も多いと思います。
歪み音の中でも、機能的なものと、器質的なものとがあります。
発語器官に外科的な問題はないのに、原因がはっきりしないものが機能性。
鼻咽腔閉鎖機能不全などにより、代償として歪み音を学習してしまう器質性の歪み音もあるでしょう。
歪み音の原因に、器質的なものはないか、検査して除外する必要があります。
ケース会議の中で、たまに器質性の歪み音を疑う場合があります。
鼻咽腔閉鎖機能を確認する検査としては、わずかの水を入れたコップにストローを差し、ブクブク吹かせたときに、鼻から息漏れがないか、鼻息鏡で確かめます。
たとえば、吹きはじめは問題ないが、数秒後には漏れ始める場合には、閉鎖が時間的に持ちこたえられない可能性があります。
ブクブクでは問題がなくても、例えば「パパパパ」と発声したときに、鼻に鼻息鏡を当てると、鼻から息が漏れている場合があります。
最近は昔と違って、口蓋裂がある場合には、口腔外科と言語聴覚士、矯正歯科などとの連携が取れ、就学までに構音指導も含めて受けてくることも多くなりました。
ただ、口蓋裂がなくても、軟口蓋を持ち上げる筋力が弱かったり、閉鎖のための穴が大きい、などの理由で、閉鎖がうまくいかないこともあります。
器質的に問題が見られない場合は、機能性を疑うわけです。
いずれにせよ、鼻咽腔閉鎖機能が不十分なままでは、いくら舌の動きを練習しようとしても、付け焼き刃的な指導にしかなりません。
と、ちょっと、歪み音の評価のことを書いただけでも、結構な分量になります。
(6月17日追記)
『口蓋裂の言語臨床 第3版』医学書院 岡崎恵子他著によると、
***
鼻咽腔閉鎖機能不全と関連が大きい構音障害
1 呼気鼻漏出による子音の歪み
2 声門破裂音
3 咽頭摩擦音
4 咽(喉)頭破裂音
鼻咽腔閉鎖機能不全と関連が小さい構音障害
1 口蓋化構音
2 側音化構音
3 鼻咽腔構音
4 構音発達上にみられる構音の誤り
5 その他の置き換え、省略、歪み
(p35)
***
とありました。
よって、mijukuさんの書かれたとおり、鼻咽腔閉鎖機能不全が原因で
側音化構音になるという因果関係のような書き方に、ブログはなっていましたので、
訂正します。
***
スライドの内容と全然違ってしまいましたが。
『ことばのテスト絵本』は選別検査です。
つまり就学時健診などで使うもので、構音障害の有無を判断するためのものです。
より詳しく検査し、予後の推定、指導の手立てまで考えるには、「構音検査(改訂版)」など、「構音類似運動検査」を含む詳細な検査をする必要があります。
ペンライトは、口の中を見て、発語器官に器質的な問題はないか、構音時の舌の動きはどうなっているかを見るために使います。
録音機器は、子どもが緊張しないように、マイクを目の届かないところに置くなどの工夫が必要です。かといって、遠すぎても正確な音がわからないので、私は机の横に外部マイクを貼り付けて、録音機器本体は、目の届かないところにおいています。
ワイヤレスになると、さらによいのでしょう。
聴力障害を疑う場合は、聴力検査も行います。
就学時健診用の2つの周波数だけ測れるものでもよいかもしれませんが、より詳細に、語音との関係を検討するには、詳しく検査できる機器の方がよいでしょう。
「ひらがな表」は、文字の読める子で、既に発音の誤りを自覚し、検査者と気軽に、構音について話し合える場合に使用します。
「このなかで、言いづらいのはある?」と尋ねます。
本人の自覚と、実際の構音検査の結果とが異なる場合が少なくありませんが、本人がどう感じているかを把握することも大事です。
遊具は、検査前後に使用し、子どもとのラポートを形成します。
子どもとのラポートが取れていない段階で、口の中を見せてもらうことなどできません。
また、検査後にも遊ぶことで、「楽しかった」で終われるようにします。ことばの教室への通級になった場合に備えて、そうした気持ちで終われることが大切です。
ことばの教室は楽しいところ、という気持ちが友達に伝わることも大切です。
***
構音検査で、よくありがちな間違い
1)会話レベルだけで判断してしまう。あるいは、特定のレベルだけしか検査していない。
→聞き取りにくいことは特にありませんでした、で終わることがあります。
たまたま、該当する音が、会話の中で登場しなかっただけかもしれません。
あるいは、検査者自身が、会話の内容に夢中になり、聞き取りにくかった瞬間を覚えていない場合もあります。
文章の音読だけで終わらせる検査も見られます。
単音節、無意味音節、単語、短文、会話の全てのレベルでどうなのかが大事です。
2)歪みと置き換えの鑑別ができていない
→「キ」が歪みなのか、それとも「チ」への置き換えなのかの鑑別が大事です。
そのためには、舌の動きを見ること。
もし「チ」は問題ないのなら、「キチキチ」と交互に言わせると、「キ」が歪みなのか、置き換えなのかがわかります。
3)一部の音だけしか検査していない。
→よく、「イ列の歪み」という報告があります。「では、エ段はどうですか?」と尋ねると、「調べていません」ということがあります。指導の手がかかりを把握するために、主訴以外の音も含め、全ての音、関連する音を検査することが、詳しい検査時には必要です。
4)音を聞くだけで、舌の動きを見ていない
→構音検査は、「聞いて、見て、触って」が大事です。
5)構音類似運動検査を行っていない
→指導の手がかりや、予後の推定(自然に改善するか)などの判断のために、構音類似運動検査は大切です。たとえば、「カ行」→「タ行」の置き換えの場合、口を開けたまま「ンー」が言えるかどうかなどです。
このペースでいくと、60分で話しきれる内容ではないとわかります。
もっともっと、時間がほしいところです。