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某公立学校ことばの教室教員。公認心理師、言語聴覚士、特別支援教育士。 『クイズで学ぶことばの教室基本の「キ」』の著者。  SINCE 2000.1.1 
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【教材】会話に名前をつける~文脈の理解、「読み」の能力、推理


会話に「名前(題、タイトル)をつける」という教材がマイブームです。
会話の内容を端的に単語一つか二つで表現できるということは、会話の文脈を理解したということです。
内容の枝葉末節にとらわれていると(つまりシングルフォーカスだと)、会話の内容の部分的にしか適合しない単語になります。

たとえば、(以下、私のオリジナル)

***

A君「明日は運動会だ。徒競走も楽しみだ」
B君「楽しみじゃないな」
A君「どうして?」
B君「だって、耳が痛くなるんだもん」
A君「どうして耳が痛くなるの?」
B君「スピーカーからの音だと、耳に響いちゃうんだ」
A君「どうして耳に響いちゃうの? 俺は平気だけど」
B君「実は僕は耳の病気なんだ。なかなか治らないの」
A君「そうなんだ。それは気の毒だね。どうすればいいの?」
B君「耳が痛いときは、耳栓をすればいいんだよ。今回、放送係からはずれて助かったよ。」

さて、この会話にタイトルをつけましょう。

わからないときは、下から選んでね。

1 運動会で楽しみなこと
2 耳
3 スピーカ
4 放送係
5 徒競走

***

会話の流れから、1,5は選択肢から除外されます。
もし、1,5を選択した場合は、運動会の内容、楽しみなこと、耳のことに色分けして会話にアンダーラインを引き、どの内容が一番話されているかを視覚的にわかりやすくします。

3も、当たらず遠からず。「2 耳」と比較すれば、B君の言いたことの主旨は、どちらが近いか考えられます。
4は微妙ですが、なぜ放送係を選んだかの理由を尋ねるとよいのでしょう。
耳の病気の話や、運動会の係の仕事の話は、経験的知識も関わるので難しいですが、そのことを差し引けば、低学年でも理解できるしょう。

文の読み能力とは、こうした文脈理解、主旨理解、部分と全体との関係などの理解と切り離しては考えられないでしょう。
そして、日常の会話、コミュニケーションでも、こうした主旨理解の能力が必要です。

会話では、キーワードがたくさん出てきます。
しかし、どのキーワードが会話の主旨かは、上記のように、消去法で考える、ということを日常、人は自然にやっているのでしょう。
それが難しい子がいる、という理解がまた大切だと思います。

ついでに言えば、上記会話から、2人の日常の関係性が推理できます。
耳の話を初めてA君にしたこと。
少なくとも、自分の病気を話せる関係であること。
でも、運動会前日までそうした会話にはならなかったことから、普段はあまり会話していないか、友達になってそんなに期間が長くないかもしれない。練習時から、耳のことで困っていると言うことを少なくともA君は知らなかっただろうこと。
などなど。
このレベルは、中~高学年でしょうか。

こうした推理も、通常、人は無意識にやっているわけです。
無意識だからこそ、支援者はそれらを意識化して、子どもの行動の「ホワイ」を追究する必要があるのでしょう。
無意識の意識化、は実はとても大事だと思います。
なぜ自分はそれができるのか、という支援者自身の課題分析力、自己モニター力が必要です。

子どもには、日常では会話の主旨を端的に説明してあげたり(それこそ名前をつけてあげたり)、通級での個別指導の場では、名前を付ける主旨理解の学習(自立活動としても、教科の補充指導としても)が考えられます。


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