ハンドルネーム ya
某公立学校通級指導教室担当教員
言語聴覚士
特別支援教育士(S.E.N.S)
性別 男
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「個別の指導計画」は、指導目標と手立て、評価から構成されます。
子どものアセスメント情報を含むものは、本来、「個別の指導計画」とは言いません。
「個別の教育支援計画」と言います。
当教室では今年度から、通級による指導における「個別の指導計画」を策定しています。「通級終了時点」の目標である「支援目標」、年度ごとの目標の「年度目標」、そして学期毎の「短期目標」の3つの目標を設定。
手立てや留意点も加えました。
各担当が案として作成した「個別の指導計画」をみんなで検討しました。
教材や手立ては、二の次です。
「目標」が、その子の主訴や困り感、実態に合ったものかどうかが、もっとも大事です。合っているかどうかの判断のために、生育歴を深く掘り下げたり、検査結果の解釈をしなおしたりしました。
学級担任からの情報収集も整理しました。
発達についての知識も動員しなければなりません。
アセスメント情報が不足していたために、目標設定を保留にした事例もありました。
「指導計画」の検討は、実際には「子ども理解」の検討でした。
教材は何でもいいのです。
それがどんな指導目標のために使われるか、それが問題だからです。
目標設定のためには、情報収集から問題の仮説の設定という、子ども理解の一連の過程を経なければならない、ということがメンバー同士で共有できたのではないかと思います。
それが共有されたこと自体が、計画の完成度以上に大事なことだったと感じました。
「衝動的に行動する」という見立てで一致していても、子どもによってその背景が異なることがあります。
脳障害のひとつにこんな現象があります。
つまり、左手では靴下を脱ごうとし、右手では靴下を履こうとする。
ふざけているわけではなく、意思から手の動きに至るどこかのプロセスに障害があるわけです。
トランプで神経衰弱をするとき、
1)2枚ずつしかめくれないのに、3枚目をめくってしまう。
2)一枚めくってすぐ戻し、あと2枚めくろうとする。
などの状態が見られたとき、それが単に「衝動性」とか「ずる」というのではなく、そもそも、意思から行動をプログラミングし、実行する過程に困難があるのかもしれません。
子どものいつもの様子と重ね合わせて、それを見分けることが重要です。
もちろん重複する場合もありますし、ADHDの機序の仮説も様々ありますが。
行動の背景の違いによって、アプローチは変わってきます。
いずれにせよ、子どもの悪気がなくても、そうやってしまう。
「まちがえちゃったね。大丈夫だよ」
と言ってあげたいです。
そして、間違えたなら、それを責めるのでなく、事後対応をほめること。
通級担当の研修の王道は「ケース会議」と「OJT」です。
講座でいくらがんばってお話ししても、実際の指導に結びつきにくいです。
実際に担当しているお子さんについて、多様な視点、専門的な視点で検討し合うことにより、子どもの見立て方を深めることにつながります。
また、「実際の指導の様子を見たい」などのニーズもあります。
実務の中で研修するOJTの要素もからめて、ケース会議後に、ケースに関連した実技研修もイメージしています。
新しい先生への支援も、主要なテーマです。
教員の「個性」も大事ですが、まずは基礎基本をしっかり学んで、その上での「個性」でなければ、それは単なる「我流」、「思い込み」にすぎません。
その意味で、熱心に勉強する新しい先生の実践は、何十年も教職を経験している先生の実践よりも、優れている、と感じることが少なくありません。
毎年、熱心に学ぼうとする先生がたくさんおられることをうれしく思います。
***
平成26 年度 夏季 臨床研修会(自主研修会)開催要項
1 目的
(1)ことばの教室、通級指導教室の新しい担当者を含め、研究協議などを行うことで、地域の言語障害教育、通級指導の教育の質の向上を図る。
(2)通級担当以外の関心のある方とも交流を深め、特別支援教育における地域の連携に寄与する。
2 主催 ○○言語障害児教育研究協議会
3 期日 平成26 年7 月25 日(金)~8 月18 日(月)の期間のいずれかの日(希望をとって決定)
(各長期休業中とも、最大2 回まで)
4 日程
8:00~9:00 個人相談・施設見学、文献閲覧など
9:00~10:00 ケース会議・講座など
12:00~13:00 昼食・休憩
13:00~16:00 ケース会議・講座など
16:00~17:00 個人相談・施設見学、文献閲覧など
5 会場
1)○○小学校
2)5 名以上の希望のある場所(○○管内。ただし、1 名以上は会員であること)
6 内容
1)ケース検討(各自持ち寄ったレポートを元にケース検討)
2)希望により講座、個人相談
7 講師・助言者 ya(○○小学校ことばの教室)
8 会費 ○○言協会員 無料、 非会員 300円
9 用意するもの
○A4サイズの簡単なケースレポート1枚×人数分(発表は任意。無でも可)
※レポートは別紙様式を参考にし、保護者の同意を得る。
○飲食物(各自ご用意ください。参加者で希望により外食もあり)
10 申し込み方法 別紙に記入し、7月2日(水)までFAX、またはメール送信する。
11 その他
(1)職員派遣依頼の公文書は、日程の決定後に改めて会長名で送付する。
(事務局の決済を経て、呼びかけ人が発送事務を行う)
(2)本事業収入は、○○言協会計の収入とする。
(3)吹雪や事故等で開催が中止になった場合は、呼びかけ人から教室代表へ連絡する。教室代表は、各教室職員に連絡して頂く。
(4)本事業は、○○言協会則第9 条、および臨床研修会細則に基づく。また「新しい先生のための旅費措置事業」対象事業に該当する。
『言語聴覚療法臨床マニュアル 改訂第3版』協同医書出版,2014
http://www.kyodo-isho.co.jp/cgi-local/search.cgi?id=book&isbn=978-4-7639-3049-1
→カラー刷りになったからというだけでなく、内容も第2版よりわかりやすくなった印象です。
高い本ですが、「安い、わかりやすい本」よりも正確で、信頼性が高いです。
『エッセンシャルズWISC-Ⅳによる心理アセスメント』カウフマン他著、上野一彦監訳、2014、日本文化科学社
http://www.nichibun.co.jp/book/detail/?id=77
→WISC-4の専門書の第2弾。『WISC-Ⅳの臨床的利用と解釈』に比べて読みやすいです。
解釈の仕方について、2冊とも読んで、その違いを比較することが有益と思います。
検査の仕方や解釈の誤りやすい例が列挙されていて、実践的な内容です。
2冊とも読み応えがありますが、ぜひ教室に一冊ずつおいて、長期休業中でもじっくり読みたいところです。
『きこえとことば研修テキスト』全国公立学校難聴・言語障害教育研究協議会,2014
http://www.nangen.jp/sub4.htm
ことばの教室の経験の浅い先生のために作成されたテキスト第2弾。
会員でない教室にも、名簿があれば全て送るという良心的な取り組み。
今後は、全難言協の「はじめのいっぽ」でも、このテキストをベースにするようです。
北海道でも、新しい先生のための「言難ABC」を開講していますが、この文献にも目を通しておくといいでしょう。
子どもを守るために、あえて波風立たない方向に舵を切ることもありました。
時が解決してくれるだろうと。
自分の担当の子だけは守ろうと。
そうしているうちに、それが内外に認められ、結果として良い方向に行くのでした。
でも、解体的出直しが必要な時もありました。
その時は強い痛みを伴いますが、必要なことだったのだと思います。
17年もやっていると、色々ありました。
でも、不正はやっぱり許されない。
ヒトは弱いから、印象で判断してしまう。
そのことを繰り返し味わってきました。
だからこそ、失敗は失敗と素直に認める自分でありたい。
結果やデータは誇張したり、ゆがめず、まっすぐに認める自分でありたい。
「いいことは自分の手柄、悪いことは他人のせい」の不安から自由な自分でありたい。
日本精神神経学会は、28日、「DSM-5病名・用語翻訳ガイドライン」を発表しました。
https://www.jspn.or.jp/index.shtml
それによると、
Autism Spectrum Disorder 自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害
Attention—Deficit/Hyperactivity Disorder 注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害
Specific Learning Disorder 限局性学習症/限局性学習障害
スラッシュをつけて、従来の表記を並べるようです。
語の与える印象によって、今後どのような影響を世の中に与えるか注目したいと思います。
通常学級では「問題行動」に見えることでも、通級担当が見ると、その行動には意味がある、と感じることがあります。
もっとも、通常学級では集団の妨げになる行動については指導しなければならないし、放置するわけにはいかないという学級担任の立場は尊重しなければなりません。
また、指導しなければならないでしょう。
ただ、指導するにあたって、子どもの行動の背景、理由がわかっている場合と、そうでない場合とでは、対応の仕方が変わるかもしれません。
子どもの行動の背景、理由を解釈し、お伝えすることも、通級担当の大事な仕事だと感じます。
そのためには、通級担当自身が、子どもの行動観察、アセスメント能力を持っていなければなりません。
単なるサボりだとか、姿勢保持が悪いとか、多動だとか、指示を聞かないとか・・・。
実は、指示の語用論的な意味が通じていないだけだったりします。
実は、友達同士の遊びの一場面を切り取っての行動であり、他人にとっては悪意でも、本人にとっては、善意の行動だったりするかもしれません。
担任を責めるのでなく、本人を責めるのでもなく、親も責めるのでなく、そうならざるを得なかった経緯、経過を理解し、うまく折り合って対応することの大切さを思います。