ハンドルネーム ya
某公立学校通級指導教室担当教員
言語聴覚士
特別支援教育士(S.E.N.S)
性別 男
■メールはこちら
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
就学指導委員会や、巡回相談の季節になりました。
今年は延べ140ケースの相談と判定に関わります。
また、発達検査もお手伝いすることになり、ますます勉強していかなければと襟をただしているところです。
さて、色々な方と関わる上で大切にしたいことです。
田中康雄先生は、『軽度発達障害のある子のライフサイクルに会わせた理解と対応 --仮に「理解」して 「実際に」支援するために---』学研
の中で、「他職連携のコツ」として、こう述べています。
*****************************
②ここで自分が、この仕事についた場合を想像してみる。
③話をするときには、それぞれの職場での専門用語を使用しないように注意し、できるだけ日常のことばでのやりとりをする。
④出会った時には「ご苦労様。お互い、大変ですね」と声をかけ、相手をねぎらうことを忘れない。くれぐれも、苦言・提言から話を始めない。
⑤関係者の助け合い・支え合いは、保護者と子どもを支える基になると考えておく
⑥それぞれの専門性を尊重し、尊敬する。
⑦最も大切にしたいのは、子どもの「今の心」であり、「未来へ向かう育ち」である。
***************************
学校の給食で、あるものをいっぱいかけて食べる子ども。
単純には「親がかけさせているから」、「好き嫌いを容認しているから」となりますか。
しかし、そこには経緯がありました。
子どもの認知特性の他、お母さんの子育てのとてもつらかった悩みの経緯。
というお話しは納得でした。
私たちは、今の現象だけを見て判断してしまいます。
今だけを見て、経緯をよく調べないということでは、
単純な因果で「推測」してしまいやすいものです。
「ことばが遅いのは、お母さんが声かけをしなかったから」
など。
研究団体の資料にも書いてありましたが、
「生育歴」は、単に「一語文が1歳」というような数値だけを
意味するのではありません。
親子が、周りが、どんな過去の経緯の積み重ねで今があるのか、
どんな思いで生活していらしたのか、
経緯を知っているのと居ないのとでは、指導のあり方、優先順位や保護者支援のあり方に大きな違いが生じる場合があります。
かつて研究団体は「問題発生要因の仮説」を立てることを大切にしていました。
つまり「何が原因か」。
「○○が原因で、今の△△の状態があるのではないか」
ということ。
しかし今は、「問題発生要因の仮説」が、「問題の仮説」に変わりました。
つまり、その子にとって、関係者にとって、「問題」は何か。
同じ構音障害であっても、AくんとBさんとでは、
様々な条件を検討したときに、「問題」の焦点が違うということ。
同じ状態でも、一人一人教育的ニーズが違う、ということですね。
この時点で、「生育歴」をなぜ調べる必要があるか、
その意味が180度変わった、と私は思っています。
少なくとも、単純な因果律でとらえるのではなくて、
物事は因果の複雑な連鎖、部分と全体、過去現在未来の響き合いの中に存在しているということを観じつつ、一つ一つの臨床に丁寧に関わっていきたいと思うのです。
経緯を理解することは、誰かを犯人扱いするためではなくて、むしろ未来に向かうための礎となるのです。
「自己中心的」とか、
「傷つきやすい」とか、
「自分に甘く、他人に厳しい」とか、
人のパーソナリティーを表現することがありますが、
発達障害とパーソナリティー障害、
そしてPTSDとの関連を考察する講義を
ある小児科の医師から受けました。
この分野の研究はあまり進んでいないそうですが、
当事者、関係者にとっては関心の高い事柄ではないでしょうか。
「どこまでが障害で、どこからが・・・」というような。
一つ間違えると誤解を生みかねませんが、
今回の講義はレベルが高くて、久しぶりに知的好奇心が
高まりました。
当事者にとって「パーソナリティーを」というのは難しいのでは、
と思いながらも、
でも活動後の「振り返り」など、SSTの分野で行われていることの中には、
パーソナリティーという視点とつながる部分も少なくないのでは、
と思っています。
夫婦の関係がよくなくて、子育ても苦労している保護者には、
「夫(妻)をあきらめなさい」ということを先生は話すことがあるそうです。
「あきらめる」ことで、気持ちが軽くなり、
そのことで相手が変わり、
やがて子育てにも参加するようになる。
「夫(妻)はこうでなければならない」
と考えるほど、苦しくなりますね。
「良い意味でのあきらめは大事」
とても納得でした(^_^) 。
以下のことは、生きやすさにつながるようです。
支援者にとっても大切な視点ですね。
「生きやすいパーソナリティーとは」
・自己の受容→自分の不完全さを認める
・自分の行動への責任感→自分の役割を遂行する
・他者への信頼感→他者の行動に受容的である
・集団への所属感→他者と協力しようとする
・貢献感→他者の役に立ちたいと願う
「かさ かっぱ ながぐつ サングラス」
違うのはどれ?
というような課題を子どもに対してすることがあります。
「サングラス 他は全部雨が降った時に使うから」
というのが模範的な解答です。
しかし、条件によっては、違った解答もあり得ます。
たとえば、かっぱだけが自分の家にはない、とか。
つまり同じ物でも、何を視点にするかによって、同じだったり、違ったりします。
視点によって、違うものでも、同じに見えるということです。
人は過去の経験というフィルターを通して、現在、未来を見ようとします。
そのときに吟味が必要なのは、そのフィルターがどんな特徴があるかを
自分で把握すること。
つまり、目の前の出来事は、過去の経験と同じではない。
一つ一つの出来事には、それぞれ独自のダイナミズムがあり、
その出来事固有の意味が託されている。
過去がこうだったから、今回もこうに違いない、というのは、
眼前の出来事のオリジナリティーを見失います。
眼前の出来事は、独自の過去と未来を結ぶ今という接点です。
独自の過去からのつながりという視点なくして、今をとらえることはできません。
とらえることができたとすれば、それはごく表面的な理解にすぎません。
人は似たような経験を結びつけて分類し、物事を法則的に
とらえようとします。
しかし、その法則、言い換えれば、物事を見るフレームワーク自体が、
どんな独自性を持っているのか、つまり「違い」について
自己検証が必要ですね。
自分のことがわかった分だけ、他人のこともわかる。
逆に言えば、人は自分自身の理解のレベルまでしか
他人を理解できないということ。
実は、これ、子どもに対面する支援者に欠かせない視点だと
思っています。
自分自身の掘り下げの範囲までしか、他人や出来事を
とらえることはできない、ということを謙虚に受けとめ、
自己のフィルターを点検すること。
新しい考え方もいいですが、
人類が数百年、数千年にわたって培ってきた智恵も大事だと思っています。
発達障害とことばの相談「ことば」を育てるために大人ができること
http://bp.shogakukan.co.jp/n-nakagawa/
言語聴覚士 中川 信子先生の連載記事です。
以前にも書きましたが、迷ったときに、
「ここに戻っていきたい」
という感じがします。