ハンドルネーム ya
某公立学校通級指導教室担当教員
言語聴覚士
特別支援教育士(S.E.N.S)
性別 男
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文部科学省の「通級による指導実施状況調査」の結果が出たようです。http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/21/04/attach/1260962.htm
人数は伸びる一方ですね。
・学習障害と肢体不自由は、他の障害と異なり、
他校通級よりも自校通級の方が割合が高い。
→上野一彦先生も言っているように、「自校通級でなければ発展しない」ということでしょうね。
特にLDは。
通常学級で今日はどんな様子だったかという情報がないと、
通級の指導も十分な効果が発揮できないし、
何よりも言語指導で標準的とされる週1~3時間の指導時間では、
LDの場合はとても足りないというのが実際です。
LDの内容にもよるかもしれませんが。
・巡回指導の割合が3%と、低水準のまま推移していますね
→通級が制度化されたときの旧文部省通知では、
巡回による指導について
「当該教員の身分取扱いを明確にすること」と
書かれています。
http://www.ne.jp/asahi/tokyo/ld/ld_1992/278.html
また、巡回指導の行き帰りの時間のロス、
事故補償、そして何よりも教員配置など
様々な困難な課題があることが、
巡回指導の伸びを妨げている要因でしょう。
「子どもが動くのでなく、先生が動く」
と親の会でも主張されているわけですが、
道は険しいですね。
日本LD学会でもその可能性と限界が述べられていました。
校内でのことばの教室の発表が無事終わりました。
発表後はよい質問がたくさん出て、
発表した甲斐があったというものです。
実際の指導場面のビデオが、やはり反響がありました。
で、うちの学校のことではないですが、
「通級型の取り出し指導」と言うと、
マイナス面が気になる向きがありますね。
「インクルージョン教育は、分離教育ではない」
このことから、通級型の取り出し指導は、
「分離教育」であり、インクルージョンに反するとの意見があります。
しかしながら同時に、次のことも言えるわけです。
「インクルージョン教育は、統合教育でもない」
通常学級にお客さん状態で座っていればいいわけでもない。
「インクルージョン教育」は、
「分離教育」、「統合教育」の両者を
弁証法的に止揚(アウフヘーベン)
したところにあるのですよね。
インクルージョンに近い通級の意義、あり方については、
実は文科省通知が一番正確で妥当ではないかと思うのです。
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/06050817.htm
別に国に忠実でなければならないと主張する意図ではありませんが。
・「通級による指導を行うに際しては、必要に応じ、校長、教頭、特別支援教育コーディネーター、担任教員、その他必要と思われる者で構成する校内委員会において、その必要性を検討する(後略)」
→通級担当だけで、通級妥当を判断するわけではないですね。
・「通級による指導の対象とするか否かの判断に当たっては、医学的な診断の有無のみにとらわれることのないよう留意し、総合的な見地から判断すること。」
→診断があるから、障害があるから、ただちに通級、とは誰も言っていません。
・」学習障害又は注意欠陥多動性障害の児童生徒については、通級による指導の対象とするまでもなく、通常の学級における教員の適切な配慮やティーム・ティーチングの活用、学習内容の習熟の程度に応じた指導の工夫等により、対応することが適切である者も多くみられることに十分留意すること。」
→通級が手段の全てではないですね。
こうした主旨は、基本的には、ことばの教室が
過去からずっとやってきたことではないかと思うのです。
文部科学省は、平成21年度の予算要求の主要事項をまとめていました。
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/20/09/08082905.htm
この中では、
*******
「小・中学校の通級指導の充実(352人)」
「特別支援学校のセンター的機能の充実(35人)」
*******
今後財務省との間でどのように調整されるか注目されます。
ちなみに今年は、通級指導の正職員の教員増は、財務省との調整の結果、
各都道府県で割って2,3名ずつというところでした。
単純に教員を増やせば良いわけではないとの指摘は、
その通りかもしれませんが、
求められる理念に比して、
予算のケタが違うのではないかと・・・。
国にお金がないのは重々わかっていますが、
別の予算項目では、特別支援教育の何倍もお金がついているのを見ると、
寂しいなあというのが正直。
巡回相談事業の拡充や教材開発に予算をつけているのは期待しますが。
今年度、法律が少し変わっているので、載せます。
通級制、特別支援学級に関する法律、通達、通知(抜粋)
○教育基本法(2006年12月22日)
(教育の機会均等)
第四条
2 国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。
○学校教育法
第81条 幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び中等教育学校においては、次項各号のいずれかに該当する幼児、児童及び生徒その他教育上特別の支援を必要とする幼児、児童及び生徒に対し、文部科学大臣の定めるところにより、障害による学習上又は生活上の困難を克服するための教育を行うものとする。
2 小学校、中学校、高等学校及び中等教育学校には、次の各号のいずれかに該当する児童及び生徒のために、特別支援学級を置くことができる。
1.知的障害者
2.肢体不自由者
3.身体虚弱者
4.弱視者
5.難聴者
6.その他障害のある者で、特別支援学級において教育を行うことが適当なもの
○学校教育法施行規則(2008年4月1日施行)
第百四十一条 前条の規定により特別の教育課程による場合においては、校長は、児童又は生徒が、当該小学校、中学校又は中等教育学校の設置者の定めるところにより他の小学校、中学校、中等教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部若しくは中学部において受けた授業を、当該小学校若しくは中学校又は中等教育学校の前期課程において受けた当該特別の教育課程に係る授業とみなすことができる。
○「障害のある児童生徒の就学について(通知)」(平成14年)
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/14/07/020706.htm
○就学指導資料(補遺)(平成18年)〜宮城県教育庁HPから
http://www.pref.miyagi.jp/syougaiji/topic/data/syuugaku_10.pdf
○通級による指導の対象とすることが適当な自閉症者、情緒障害者、学習障害者又は注意欠陥多動性障害者に該当する児童生徒について(通知)(平成18年3月31日、文部科学省HP)
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/06050817.htm
○特別支援教育の推進について(通知)(平成19年4月1日、文部科学省HP)
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/07050101.htm
先に引用した「通級学級に関する調査研究協力者会議」(山口 薫座長)は、
通級担当教員の「専門性」について、以下のように答申しています。
(以下、引用)
(下線は、私が付加しました)
**************************
3 教員の資質の向上
通級による指導が教育効果を上げるためには、何よりも担当教員の資質が重要である。通級による指導は、IIIで述べたように、限られた時間の中での1対 1の個別指導が中心であるため、担当教員は専門的な指導そのものの成果を問われることとなる。しかも、多くの場合、児童生徒は通常の学級の授業の一部を替えて、場合によっては遠くから保護者が付き添って来て、指導を受けており、それだけの教育効果を上げなければ、通級の意義そのものが問われることとなる。このため、専門的な知識、技能を有するとともに、個々の児童生徒の障害の状態や特性等を適切に把握し、それに応じた指導を行える力量を有する教員が担当することが望ましい。
しかしながら、通級の担当教員、特殊学級担当教員については、経験年数が少なく、専門性が十分ではない者がみられるということも指摘されている。今後、国、都道府県、市町村の各レベルで、専門性と個別指導の力量を養うための研修の充実を図ることが必要である。また、長期的には、教員養成においても適切な配慮が行われることが望ましい。
**************************(引用、終わり)
「実質的には、学校加配でなく、地域加配」
北海道言語障害児教育研究協議会は、『通級による指導を理解していただくために』という文書を出しています。
(以下、引用)**********************************
(通級が)制度化されたことにより、法律によって地域の中で通級による指導を希望する全ての児童生徒に指導を受ける機会が与えられたことになりますから、地域に対する啓発や連携も大切な役割となります。一般に「加配」は学校へ加配されるものであります。「通級指導対応の加配」も同様ですが、併せて地域への役割を担った加配であります。
これらの趣旨が、校長先生をはじめ学校関係者に十分理解された上で、校内の他の職員や他の業務との調和を図りつつ、通級指導教室が設置されている趣旨が生かされるように担当教員の業務が行われることが大切です。
**********************************(引用、終わり)
法律上は学校加配ですが、実際には他校からも多数通級しているわけです。
他校通級のためには、在籍校との効果的な連携が必要です。
つまり、その学校の先生というだけでなく、事実上、地域の先生でもあるわけです。
「自分の学校の校務分掌優先」という「ポリシー?」のために、他校の通級指導を休みにするというのは、子どもの学習権にとってどうなのでしょうか?
ポリシーって、誰のためにあるのでしょうか?
他校通級そのものの是非はありますが、現在他校通級が存在している、通っている子がいるというのが現実です。
「全国ことばを育む親の会」の機関誌『ことば No.204』(2002年8月28日発行)では、「親の会の願い」として、こう述べられています。
(以下、引用)*************************
「本務に専念できる環境づくり」
全国各地では、先生方が『加配教員』だということで、校内の処遇は自由にできると、通常の学級の分科担任を命じられている先生や、補欠授業の要員にされている先生が数多くいます。(中には自ら希望する先生もいるということですが・・・)
これを改善して、本来の業務に専念できるようにすることで、指導できる子どもの数は増加する筈です。
そのためには、通級指導などの特殊性・専門性を地教委や設置校の校長先生をはじめ、設置校全職員によく理解してもらう必要がありますが、担当の先生の努力だけでは、不十分な場合が多いようです。
最終的には、だれからも専門職として認められるような制度を作る必要があります。
そのために、全国言語障害児をもつ親の会(注1)では、「言語障害教育教員免許」(注2)を新設することを要望しているのです。
*************************(引用、終わり)
(注1)現在「全国ことばを育む会」に改称)
(注2)現在は、言語障害教育を含めた「総合免許状」を通級担当に義務づける主張をしています。
親の立場としては、藁をもすがる気持ちで通級指導教室に相談に来られます。
親子の立場に立つ、という想像力を学校関係者は持つことが大切だと感じます。
ただ、だからといって、ことばの教室を初めて担当した先生個人を責めるのも筋違いでしょう。
対峙すべきは「個人」ではなくて「体制」です。
日本発達障害ネットワークは、平成18年7月3日、文部科学省に対して、「平成19年度文部科学省関係予算要望事項」を提出しています。
http://jddnet.jp/view/pdf_view01.php?a=86
その中で、「NPO 法人アスペ・エルデの会」は、以下の要望をしています。
(以下、引用)************************
3.専門家の育成と職員の専門性の確保をお願いします
*職員、教員対して、適切な研修事業を実施してください。
適切な支援を行う保健師、保育士、教員などの専門家は地域で現場の仕事のなかで育成するということをご理解ください。予算上、役割を担う人がいればいい訳ではなく、本当に専門性のある職員を育成ください。それが難しいなら、地域の専門家たちとの間で、ともに行政の支援プランを考えるよりよい関係を結び、地域の中で活躍できるようにビジョンをもって考えるようにして下さい。ビジョンなく、「都合よく」使われることでは、質の高い仕事をしている専門家が関与することは今後できなくなってくるでしょう。これから、発達障害も含めた、発達支援・子育て支援の専門性を大切にする地域と、そうでない地域とで、専門性の差がさらに広がっていくと予想されています。この専門性の差は、住民サービスの実質的な低下につながります。
************************(引用、終わり)
「通級担当である前に、学校の先生なのだから、通級担当は一定期間で交代すべきだ」
「通級担当である前に、学校の先生なのだから、通級担当は校内の仕事を優先すべきだ」
昔からこうした議論はあります。
いろいろ話しを聞くと、今、さらにその傾向が強くなっているようです。
「通級学級に関する調査研究協力者会議」(山口 薫座長)は、
1992.3.30、以下のような答申を出しています。
「さらに、通級は、通常の学級における授業の一部に替えて行わわれること、他校の児童生徒に対して放課後を中心として指導している場合があることなど、教育形態や担当教員の職務の形態が特殊であるため、学校内においても、これに対する理解が必ずしも十分に得られない場合があることが指摘されている。
通級による指導を効果的に行うためには、各学校において、校長が中心となって、一般教員の理解を深めるとともに、校内就学指導委員会の機能の充実や協力体制の整備を図る必要がある。また、担当教員の職務の形態の特殊性にかんがみ、担当教員について校務分掌などの面において適切な配慮がなされることが望ましい。」
先生のための校内体制である前に、
通ってくる子どものための校内体制では?