ハンドルネーム ya
某公立学校通級指導教室担当教員
言語聴覚士
特別支援教育士(S.E.N.S)
性別 男
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「物忘れが多い人は、将来認知症になりやすいようですよ」
ある方から頂いたお話でした。
それ以来、私はきっと老後、認知症になりやすいのだろうなと半分不安な気持ちでした。
しかし、「物忘れ外来」の権威の元で学んだ方によると、それは明らかな迷信なのだそうで、「認知症は脳の変性疾患であり、病気です。普段物忘れが多いから、認知症になるという統計はありません。そういう誤ったことを言う言語聴覚士は辞めた方がいい」とまで言い切っているそうです。
私はその話を聞いて安堵しました。(笑)
私はワーキングメモリの小ささを自認しておりますが、認知症でなくても、長谷川式なんとか検査に引っかかるのではないかと思っています。
でも、自認する人は、仮に認知症でも軽度だそうで、重度になるほど、自分の能力の判断自体が困難になるようです。
そして、脳画像なども用いて、本当に脳萎縮なのかが、かなりわかるようですし、検査のバッテリーを組んで、より診断の精度を高めているようです。また家族から色々情報を頂いたり、行動観察などの情報も合わせて総合的に診断するわけです。
先日のケース会議では、WISC-Ⅲの点数だけしかなく、そのときの行動観察などの情報がまったくないものと出会いました。
その通級担当の先生の問題というよりも、検査をした方の報告の仕方に問題があると思いました。
数値だけで判断するのは危険ですし、行動観察の情報がなければ、データとしての意味がありません。
WISC-Ⅳではその点がかなりうるさく言われているのも仕方がない、と改めて思ったのでした。
数値だけで判断するのも、行動観察だけで判断するのも、まさにニセ科学なのです。(^_^;)
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今、私に必要なのは睡眠であることを実感しています。
よく眠れると、難聴がありながらも、周りの声を拾う能力があがったようです。
これまでは声をかけられたり、独り言のように遠回しにお願いされたことなどは、頭に入らず、無視したように思われたこともあるでしょう。
***
「同時処理と継次処理」
「言語性と動作性」
「ワーキングメモリ」と「結晶性知能」
それぞれ確かに典型的な事例があることも事実です。
しかし、睡眠、食事、心理などの「土台」をよく調べることなしに、「同時処理が優位ですね」などとするのは的を射ていません。
「土台」が整うことで、認知心理学的な偏りは目立たない程度になる事例もあります。
たしかに、LDは、定義上、環境要因ではなく、中枢神経系の問題と推定されています。
しかし実際には、純粋に神経心理学的な問題だけという事例は少なく、様々な要因が絡んでいることの方が多いのです。
夜更かしして、朝食もとらずに登校する子が多くいます。
本当の力を発揮できるはずがありません。
通常学級に補欠授業に入ったときに、寝た時間を尋ねたことがあります。
みんなとても遅い。私より遅い子が大勢いました。
しかし、就寝時間が遅くなるのは、日中の生活が充実していないとか、家族関係がぎくしゃくしていて、そうでもしないとストレスが解消されないとか、これまた様々な背景を見なくてはいけません。
テレビの視聴時間が長いのも、もしかしたら人間関係などのストレスを抱えているからかもしれません。
トータルな子ども理解なくして、指導の手立てはありえないのです。
北海道教育大釧路校の二宮 信一先生は、『児童心理2006年12月臨時増刊』(2006、金子書房)でこう述べています。
(以下、引用)―――――――――――
ここ数年の動きを見ると、「理解本」よりも、発達障害のある子どもとの関わりに重きを置いた「実践本」が多く目に見られるようになってきている。(中略) 「教材」や「指導方法」のみに関心が行ってしまうと「実践本」は「マニュアル」となってしまい、「マニュアル通りの関わり」という問題が起きてしまうように思う。(中略)子どもと関わるのは、決してマニュアル化されたプログラムではなく、親であり、教師自身なのだと思うのである。
――――――――――――(引用終わり)
北海道のある学園の心理士は、講演で以下のような主旨を話されています。
「運動会のピストルの音を怖がる子に、音に慣れさせる訓練をしていた事例がありました。ピストルの音に慣れないと、学校に上がってから運動会に参加できないだろうと。しかし、その子は生涯、ピストルの音を何回聞くでしょうか。本当に必要な指導でしょうか」
指導技術、指導方法を学ぶことは大切です。子どもへの熱き想いがあっても、その子に合わせた「技法」がなければ、子どもに「届かない」からです。
しかし、どんなにすばらしい指導方法でも、目の前の子にフィットしなければ、時間の無駄ということになります。ある指導方法を別の指導者が別の子に取り入れても、的はずれになることが多いものです。
既製品を使うとしても、その子に合わせてアレンジすることが大切なのでしょう。
「その子への指導方法はどこか遠くにあるのではなく、本の中にあるのでもなく、その子自身の中にある」
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今年度も巡回相談に関わらせて頂きました。また会議に行かなくてはいけません。
初めてであってから数ヶ月も経っての専門家チーム会議。出席前に、改めて情報収集しておく必要を感じています。忙しくて電話する暇もないのですが。(^_^;)
巡回相談時は、ちょっと授業を見せて頂いただけで、よく「どのように指導したら良いでしょうか」と尋ねられますが、すぐには回答しません。
かつて本に書いてあることをすぐに回答したことがあって、結果としてヒットしないことが多かったからです。
指導の手立てを示させて頂く前に、子どもについての深い理解と哲学の共有が先だと思うようになりました。
だからまずお子さんのことを詳しく尋ね、子ども観を整理して、その上で、考えられる指導を例として、哲学を乗せて提示させて頂くようにしています。またその指導例は、一つではなくて、いくつかを組み合わせる形が良いと考えています。
ヒットしたと感じるのは、ケース会議で多くの方がうなずいてくださったとき。それは子ども理解がかなり深いところで共有された時でもありました。子どもの学校生活だけではなく、起きてから寝るまで、生まれてから今までの子どもの「思い」を共有できたとき、「やっぱりそうだった」と関係者が思える瞬間が本物。それは従来の生徒指導、教育相談の考え方とも符号する瞬間であり、ベテランの先生にも理解頂けた瞬間です。
「指導方法」をどこか天竺に取りに行くイメージだと、うまくいきません。目の前の子どもからどれだけのことを感じるか、この原点をはずしたら、どんな理論もむなしいのです。
本に書いてある「指導方法」には、必ず背景理論があります。その背景理論の理解なくして、方法論に飛びつくこと。それは「チルドレンファースト」ではないのでしょう。支援者の自己満足に過ぎません。(^_^)
・一見楽しく学校生活を送っているように見える子ども。しかし、絵を描かせると、真っ黒な登場人物を描きました。背景情報から、強い自己否定の感情が見えてきました。
・とても仲良さそうに関わっている親子。しかし、それは親から虐待されないために、必至に「かわいい子」を演じて身を守ろうとしているに過ぎませんでした。
・精神・神経科を訪れた女性。「だいぶ元気になりました」との笑顔の挨拶が、最後でした・・・。
・工作に全く手をつけない子。多動もあるので、意欲が全くないのだろうと思っていました。しかし、支援員に尋ねると、構成を必至に考えても思いつかず、一生懸命やろうとしているのに、ずっとつらい思いで過ごしていたことが、あとでわかりました。
***
一つの事象だけで、子どもの状態像を評価するのは極めて危険です。様々な背景情報と組み合わせる。これはアセスメントの基本。
物理学では、物をどんなに必至に動かそうとしても、動かなければ、運動エネルギーは0でよいのでしょう。
しかし、その物にどんな外力が加わっているかは、見た目だけでは判断できません。
周辺の環境をよく検討したり(環境との相互作用)、外力を測定する機械(各種検査)が必要でしょう。
一つの事象を「意味づける」のではなくて、「意味(本人の思い)を感じ取る」ということ。両者には雲泥の差があります。
そして大切なのは、「情報量」ではなくて、「情報の種類の量」です。情報をいくら仕入れても、その観点がシングルフォーカスならば、何もわかりません。
アセスメントレベルがずれていれば、指導仮説から評価まで、すべてがずれることになります。それは「多様性」とは違います。
「見る」と「観る」の違いでもありましょう。
それはまた、「あるがままの自分」をあるがままに見つめると言うことでしょう。しかも温かく。
自分の誤りは誤りとして、失敗は失敗として、ごまかすのではなくあるがままに温かく受け止める。それが、正確で深い子ども理解につながるのだと思います。
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午後のケース検討では、
社会性、コミュニケーションと想像力の困難が背景にあって、
様々な状態像を示すと思われる小学生の事例を検討しました。
いろいろな方からご相談頂きます。
そこでいつも思うのは、その子へのぴったりの指導方法は、情報がなければ私にはわからない、子どもを理解することの中に答えはある、ということ。
行動障害の背景として、脳機能を疑うためには、その前に色々な情報整理が必要かと。
すなわち、
朝ご飯は食べてきているのか。
睡眠はとれているか。生活リズムはどうか。
家族内力動はどうか。
習い事は負担になっていないか。
脳機能以前に、視力、聴力、その他感覚器官はどうか。
そして、
その行動が、どんな条件で現れ、どんな条件で消失、あるいは変容するのか。
さらに、
子どもの障害の部分だけでなく、その子の日常生活全体がわかるようなアセスメントでなければなりません。
知識の専門家というだけでなく、その子の専門家に。
・「支援より、理解を」
・指導は、アセスメントに始まり、アセスメントに終わる。
・「系統的指導プログラムの前に、子ども理解を」
・「指導書はどこか遠くにあるのではなく、その子自身が指導書である」
好評につき、自主研修会第2弾を手弁当で開催、
2日間開かせて頂き、のべ8名の参加を頂きました。
中には他の障害の特別支援学級の先生も参加されて、
有意義な内容になりました。
すてきだなと思ったのは、前回のケース会議に比べて、
参加者の質問が増えたこと、質問の内容も
核心を突くことが増えたこと、があると思いました。
この分野の仕事では、知識も大切ですが、
最後はセンスだと思っています。
それぞれセンスが磨かれていると感じました。
以下、一般に、今後の課題と感じていることを載せます。
・WISCの結果は、言語性IQ、動作性IQ、全検査IQだけでなく、
群指数や下位検査のデータもみたいものです。
できれば検査時の子どもの反応も。
別の医療機関等のデータの場合は子どもの反応が情報として伝わってこないことが多いので、せめて各数値だけでも全て載せた方が良いでしょう。
また別の機関で検査をすることが事前にわかっていれば、通級時の子どもの様子を手紙にして送ることが必要と思います。検査の解釈には日常の情報が不可欠です。
・学級担任等からの情報収集では、情報の観点を明確にすること
→ケースレポートでは、学級担任、保護者からの情報収集に
苦労している様子がうかがわれました。
どんな情報を仕入れたらよいか分からないというともあるでしょう。
1 学習面
2 基本的生活習慣
3 言語コミュニケーションの状況(特に休み時間の過ごし方)
4 社会性
5 行動面
6 運動面
7 現在の支援体制、校内で使えそうなリソース
8 器質面(視力、聴力、その他投薬など)
9 得意なこと、興味、その他
というように観点を予め用意し、観点に沿って質問すると良いでしょう。
もちろん、担任の先生は急に聞かれても答えられませんから、
予め観点をFAXやお手紙などでお知らせし、後日お話しを伺う
というようにします。
また40人から抱えている学級担任の先生には、
子どもをそこまで詳しく見られない、ということもあります。
その事情はそれとして敬意を払い、
それ自体が一つの情報となります。
大部分を過ごすのは学級、家庭であり、通級時の行動観察は、
週1回の断片的な情報に過ぎない、というおさえが大切です。
逆に言えば、学級担任、保護者等からの情報は、
通級の指導内容を検討する上で欠かせないと言えます。
もちろん、それが全てでもありませんし、通級指導内容の優先順位を
検討する際には、通級で効果が上がりやすいこと、あがりにくいこと、
通級や学級それぞれで、できること、できないことを明確にする
必要もあります。
情報を発信することも大切ですし、情報を入手することは、もっと大切です。
私自身の反省も含めて。
また、学級担任に電話をしづらい、電話してもつながらないと言う悩みが
多くあります。これを解決するための手立てを紹介しました。
・指導の手立ては、情報の収集の中にある
→その子の指導方法はどこかの本に載っているのではなく、その子自身の中にある
一般に、安易な指導プログラムが魅力的に感じてしまう背景には、
情報収集と総合的判断をどのようにしてよいかという悩みがあるのだと思いました。
・教育相談のやり方、流れの研修、バージョンアップを
→ちなみにうちの教室の教育相談は、かなり丁寧に行っている方だと思います。
1 教育相談受付
2 生育歴調査票の郵送と事前返送、学級担任等からの情報収集
4 事前の全体打ち合わせを行い、事前情報を元に検査法の選択と保護者面談の視点を確認
5 教育相談実施。保護者担当・子ども担当に分かれ、それぞれ複数の教員を配置し、複数の耳、目で確かめる
6 別の日に事後打ち合わせを行い、全ての情報を元に、総合的な判断と、通級妥当の判断を含めた支援の方策を話し合う
通級担当の人事がネコの目のように変わるようになってきている現在、全員で打ち合わせ議論することで、経験の浅い先生へのフォローを初めの時点でしっかりしておくことが必要と感じます。教育相談業務を全員で取り組むことが、それ自体貴重なケース研修になります。
今の職場に転勤した時点で既にこの丁寧な体制はできていましたが、観点をより明確にし、検査法の選択肢が増えるようになったのは、ここ数年のことと思います。
通級対象が拡大した影響で、相談内容も多岐にわたるようになったこともあり、情報収集すべき観点もそれに合わせて増やさなければなりません。
関係者の負担になる部分もあるかもしれませんが、正確な判断と支援の手立てを構築するには、情報の収集と整理をきちんと行うことが大切だと思います。子ども目線に立てば、一時の負担より、これからの幸せ、です。
いずれにせよ、お忙しい中これだけ自主的に集まってくださった方々、
とても感謝感激、通級の未来は決して暗くない、そう信じたいと思いました。