ハンドルネーム ya
某公立学校通級指導教室担当教員
言語聴覚士
特別支援教育士(S.E.N.S)
性別 男
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その子の支援において、ことばの教室への通級が妥当かどうか判断する場合があります。
逆に、既に通級している子の通級を終了することが妥当かどうかの判断もあります。
判断の際に、大切だと感じていることがあります。
1 この2つを判断するための基準(めやす)は表裏の関係であり、同時に検討することが必要であること。
2 通常学級での指導の工夫やTT、放課後サポートなど、他の支援の選択肢も含め、総合的に判断すること。(「なんでも通級」には批判的に対峙しなければならない。相談に来たのだから、通級にしてあげようという温情的な判断は、一見子どものための思えるが、通級への依存体質を作ってしまう危険性がある)
「25文科初第756号、平成25年10月4日」通知には、その旨、明確に書かれている。
3 一律に線を引いて基準通りに判断するのでなく、ケースバイケースであること。
ただし、指導者の主観だけで判断するものでもなく、一定のめやすは必要なこと。
4 保護者、本人、指導者、学級担任、専門家など、関係する人の意見を聴取した上で判断すること。
5 面接場面だけで判断するのでなく、行動観察、生育歴、検査の3つがそろった中で判断する。
6 機能性構音障害の場合、「日常会話においても、障害音が改善されていて、誤って発音した場合でも、おおむね自己修正できる」が平均的なめやすと思われる。
ただし、通級のための条件など、総合的な判断は必要。
必ずしも「全部直ったから終了」ではなく、予後困り感が生じるおそれがない場合など、応用的な判断はありえる。ただし、指導者の力量不足で改善できないものを子どものせいにしてはならない。
全国の吃音の当事者団体の代表を務められ、各地へ講演、相談に出かけられている先生のお話をうかがいました。
先生のお話からは、あくまでも本人の視点に立ち、支援者は支援に当たらなければならないという、強い説得力を感じました。
「『なんでもないでしょ』、『症状は軽いでしょ』と人は言います。励ましのつもりなのでしょう。しかし、そのように言われると、本人は人に相談できなくなるのです」
「小さいうちから、吃音について家族で話し合い、困ったときは相談できること。そして一日15分、楽しく関わる時間を作って欲しい。子どもを孤独から救い出すのです」と先生は力説していました。
一方、昔は「吃音を意識させない方が良い」、本人とは話題にすべきではないと考えられていたことについて、先生は次のように述べました。
「本人が親や先生などに相談したいと思っているのに、誰も話題にしてくれないので、相談自体をしてはいけないものだと思ってしまうのです」
その結果、社会に出てから吃音に向き合うことができずに、社会不安、対人恐怖に陥る事例があとをたちません。
「吃音を意識させると吃音になる」という考え方を「診断起因説」と言います。しかしこの説は、研究により、今では完全に否定されています。
また、吃音の「原因」は、「育て方」にあるのではありません。「きっかけ(どもり始める原因)」と「どもりの原因」とは違う、と先生は警鐘を鳴らしていました。
また、吃音への対応は、子どもによって異なります。大人が良かれと思っても、本人は「どうして私に聞いてくれないのか」と感じるとのことでした。
今回で、先生のお話を直接うかがったのは4回目です。
お話をうかがうたびに、吃音に限らず、全ての子育て関係者が「本人の内側からの理解」の大切さを教えてくださっているように思います。
検査法の組み合わせで、正しいのはどれか。
1. 田中ビネー知能検査V ―――― 個人内差の把握
2. WISC-Ⅳ ―――――――――― 言語性IQと動作性IQ
3. ことばのテスト絵本 ――――― 選別検査
4. PVT-R(絵画語い発達検査)――― 全般的な言語能力
5. 就学時健診の一斉知能検査――― 知的障害の有無の最終判断
***
個人間差・・・他の子と比較してどのくらいの位置にあるか。
個人内差・・・その子の中で、強い力、弱い力の差
WISCー4では、「言語性IQ」「動作性IQ」は廃止されました。
WISC-3には存在していますが、検査自体が古くなりました。万が一使用する場合でも、言語性IQ、動作性IQよりも、4つの群指数(言語理解、知覚統合、注意記憶、処理速度)の方が有用です。
ただし、「注意記憶」の下位検査に「算数」が含まれてよいのか、そもそも「注意記憶」という概念自体どうなのかなど、様々な問題点が指摘されているため、古い検査の弱点はしっかりおさえる必要があります。原則として最新版を使うことが必要です。
選別検査は、障害の疑いがあるかどうかを「ふるいわけ」する検査であり、それだけをもって、知的障害などの判断の根拠にはなりにくいものです。
PVT-Rは全般的な言語能力ではなく、語いを見るテストです。
検査のやり方の研修も大事ですが、その前に、まずそれぞれの検査法の位置づけ、理論をしっかり学習した方がよいでしょう。
小学2年生の吃音のある男児。もっとも適切な指導はどれか。
1. どもった時は、「緊張するからどもるんだよ」と声がけをする。
2. ことばがつまって困っていたら、本人の代わりにすぐに言ってあげる。
3. 苦手な言葉の言い換えを勧める。
4. 構音障害の合併例でも、構音指導を実施しない。
5. 本人が吃音について触れたくないようすの時は、無理して話題にしない。
***
1
緊張するからどもるのではなく、どもるから緊張します。
別に緊張していなくても、吃音は生じます。
2
せっかく本人ががんばって言おうとしているところを、他人が代弁してしまうと、自分がいいたかったのに、など、挫折感や無力感を持つでしょう。
3
そのことばを言いたかったのに、という本人の話したい気持ちに沿わないことになります。
別のことばに言い換えるという選択肢は最終的にあり得るとしても、選択するかどうかは本人の意思です。
4
構音障害の改善により、吃音にも一定の改善効果が見られることがあります。
構音障害により流ちょう性に影響している、と見立てられる場合は、構音指導は選択肢としてありえます。
5
本人が正面から向き合おうとしていないときに、ダイレクトに話すのは、他の障害も同じようにややデリカシーを欠いた対応ではないでしょうか。
そのことで、通級を嫌になったという事例も出ています。
一般に、直接的に吃音について本人と話す方が良いのはその通りですし、昔のように、一切話題にしないというのは極端です。
しかし、本人がいやがるのを無理に、というのも極端ではないでしょうか。
正しいのはどれか。
1.「お口の体操」は、構音障害のある子には必ず行った方が良い。
2.無意味音節では正音でも、単語レベルで誤音の場合は、語内位置弁別(単語の中のどの位置にその音があるかを判断すること)がどうかを確かめる。
3.どの音でも、正しい音を繰り返し聞かせて練習すれば、発音は改善する。
4. 「イ」の歪み音の改善のために、歯磨きさせながら言わせると良い。
5. 「カクケコ」→「タツテト」の置き換えの場合、前歯のかみ合わせが重要。
***
1 お口の体操が必ずしも必要でないケースなのに、そればかり行って一年たってしまったという事例が見られます。お口の体操が必要か否かの判断は、新しい先生には難しいかもしれません。
めやすは、「構音類似運動」です。
たとえば、カ行がタ行に置き換わるのは、奥舌が挙上して、軟口蓋に接して破裂させることができないからです。奥舌を挙上させ、軟口蓋に接し、その際、舌先は下げたままで、「んーー」と言えるかどうかが判断材料の一つになります。
また、「全体的不明瞭」な場合、発語器官の筋力が弱い場合や、舌などの微細運動が苦手なことが要因である場合があり、その際は、お口の体操もよいかもしれません。
ただ、そもそも、自分が発した言葉をリアルタイムで自分で聞き取ったり、相手に伝わったかどうかを確かめながら話すことの苦手さが要因である場合には、お口の体操は時間の無駄と言えます。
3 正しい音を聴かせれば、正音が発音できるというのを「聴覚刺激法」と言います。
前回記事で触れたように、聴覚刺激法は、被刺激性(正音を聞かせると、正音が出せる)がある時には有効ですが、被刺激性がないのに、この練習を繰り返すのは無意味です。
4 側音化構音の場合、舌の脱力が重要です。歯磨きをさせてイ段の音を出すというやり方は、両口唇を引くことで「イ段」を導こうとしたのかもしれません。
しかしそれでは、舌の状況が観察できませんし、発語器官の余計な動き、緊張を誘発する危険性が高いため、歪み音の指導としては、きわめて不適切です。
この手法は、某文献で、知的障害のある子への指導例として載っていました。
そしてその手法は、「指導の体系化冊子」という、寄せ集めの「テキスト」で引用されたわけです。しかしこの冊子の執筆者は、経験年数の短い先生方が多く、文献の引用や学術的根拠などについて、誤った内容、偏った内容が多々見られます。数年前、全道大会で発表されたものですが、持っている方は、すぐ破棄することをお勧めします。
5 カ行は、構音の位置が奥舌と軟口蓋ですから、前歯のかみ合わせは関係ありません。
一音、一音について、口の中のどの位置で音を産生しているのか、仕組みを十分理解してから、指導を進めることが大切です。
6歳児。「シ」が単音節レベルの側音化構音への初期の指導で、最も適切なのはどれか。
1. ろうそくの火を吹き消したり、風車を吹いて回す。
2. 顎が左に偏位するので、右に戻す練習
3. 何度も「シ」の正音を聞かせて、繰り返し発音させる
4. 舌の脱力を練習する
5. 正音と歪み音との弁別(聞き分け練習)を行う。
***
側音化構音の評価のポイントは、舌先が左右どちらかに向いているかとか、顎が左右に偏位しているか、とかではありません。
舌背が挙上して、呼気が正中から出るのをブロックしていること自体が問題なのです。
したがって、ろうそくの火を吹き消したり、風車を回すなどの練習は、舌背が挙上して、呼気が舌縁から漏出しているならば、意味のない指導です。
口唇で呼気がまっすぐになっても、口の中では呼気が横から漏出しているならば、かえって側音化を強化するだけです。何年通っても改善しません。
また、側音化構音は、指導者の耳が慣れて、「少しよくなった」と感じることがあります。
しかし、側音化構音の場合は、「少しよくなった」はありえません。
正音が出せるようになると、「全く違う音が作られた」と感じられるはずなのです。
ほとんどの場合、指導者の錯覚です。
音の渡りの関係で、歪みは顕在化するでしょう。
一般家庭ではできない指導です。
正しい音を聞かせて、まねして言わせる指導を「聴覚刺激法」と言います。
側音化構音の場合、被刺激性(正音を聞かせると音が改善する)がない場合がほとんどですから、無効です。
聴覚刺激法で改善するぐらいなら、ことばの教室の先生は不要です。
特に低学年の場合、正音と歪み音との聞き分けは難しいです。
何年もかけて子どもが大きくなってしまって、卒業、という事例がありました。
時間の無駄です。
その時間を使って、構音練習をした方がはるかに効率的です。
正音が出るようになってから、正誤弁別を行えばよいのです。
6歳の男児。主訴は「サカナがシャカナになる」。まず行うべき検査はどれか。
a.構音検査
b.純音聴力検査
c.言語発達の検査
d.視知覚認知検査
e.読解力の検査
1. a、b、c
2. a、b、e
3. a、d、e
4. b、c、d
5. c、d、e
***
視知覚とは、単純に言うと、形を見分ける力のことです。(実際にはもっと複雑で深いですが)
構音が主訴なので、「まず行う検査」にはなりません。
読解力の検査で、言語発達の様子などの一部を見ることはできるかもしれませんが、読解力=言語発達ではありません。
言語発達の遅れに伴って、構音の発達が遅滞しているのかもしれません。
サ行は、構音の発達で、最後に獲得する音です。小学校低学年までもちこすことがあります。
言語発達に比例した構音発達ならば、まず指導すべきは構音なのだろうか、という支援の方向性を判断するためにも、必要な検査です。
純音聴力検査の「純音」とは、聴力検査の「ピー」音のことです。
構音障害の背景に、聴覚障害があるかもしれません。除外するためには必要な検査です。
「サ行」の置き換えの疑いであれば、周波数の高い音の聞き分けが注目されます。
構音が主訴ですから、構音の検査は必須です。
また、検査には専門的な知識、技術が必要です。
会話時にたまたま置き換わっているだけのものを拾っても、評価できません。
単音節、無意味音節、単語、短文、会話の各レベルでの評価が必要です。
また、構音類似運動検査により、発語器官の音産生の基本的な運動能力があるかどうかを評価することも重要です。
情緒障害(場面緘黙)
家では話せるが、学校で話せない小2女児。もっとも適切な指導はどれか。
1. 話せるようになるまで、学級の前で発表の訓練を行う。
2. 学級で順番に当てるとき、本児の順序は抜かすようにする。
3. ことばを先取りしてきた親の対応が原因なので、甘やかさないお願いをする。
4. 本人が安心できる人、場所、活動内容を保障し、徐々に難易度を上げる。
5. 「家では話せるのに、どうして学校では話せないのかな」と本人に質問してみる。
***
1
家では話せるので、話す能力に問題があるわけではありません。
よって、「訓練」によって「改善」しようとするのは、原則として適切とは言えません。
ただし、決まった発表内容だと話しやすい子もいるので、全く誤りとは言えないかもしれません。
いずれにせよ、本人の気持ちを第一優先にすべきではないでしょうか。
2
順番を抜かすというのは、本人にとっても、周りにとっても不自然だし、傷つくのではないでしょうか。当てられたら、指さしなど非言語的な手段で答えられるような発問にする、発表が難しい場合は先生に合図する約束を予め本人と話し合って決めておく、などの工夫が考えられます。
3
場面緘黙は、親が甘やかしたことが原因ではありません。
そもそもそうなりやすさ、素因があるのです。
5
本人に聞いてもわかるはずがありません。
余計な心理的な負担を与える質問は、しない方がいいでしょう。
新しい先生への研修について、今回は問題集に取り組むという手法をとってみました。
「問題の意味がわからない」
「歪みと置き換えの違いって何ですか?」
という、質問が出ることは想定済みでした。
だからこそ、問題の解をグループで考えるワークにしました。
参加者は1年目から、10年経験している先生もおられたので、私が一方的に教えるよりも、参加者同士で練り上げた方が身になると、考えたのです。
問題集は、できるだけ現場で実際に起こるケースを想定して作りました。
***
ことばの双方向のやりとりに困難のある小1。もっとも適切な通級指導はどれか。
1.語いの拡大のため、子どもの興味がなくても、絵カードを次々呼称させる。
2.聞く力が弱ければ、子どもの関心がなくても「きくきくドリル」で指導する。
3.ごっこ遊び、見立て遊びの苦手な子に、文章読解のドリルを行う。
4.音声言語の表現が苦手なので、ジェスチャーや指さしでの表現は禁止する。
5.遊びの中で、子どもの関心、文脈にそったことばがけをする。
***
1は、よくありがちな指導です。
しかし、絵の名前が呼称できるということと、その絵の意味を理解したかということとは別なわけです。
「ミシン」と言えても、実際にミシンがどんな働きをするのか、何ができあがるのかなどのつながりも含めて理解して、はじめて「語彙」を獲得したことになるのではないでしょうか。
2 「きくきくドリル」はよく用いられているようですが、「双方向のコミュニケーション」にニーズのある子に、はたして第一選択になるでしょうか? しかも子どもに「関心がない」わけです。
「聞く力」を育てるというだけでは、「双方向のコミュニケーション」の育成には必ずしも結びつきません。
3 ごっこ遊び、見立て遊びができない子に、登場人物の気持ちの読みとりは難しいでしょう。週の限られた時間の通級で、何を優先順位におくかということです。
4 むしろ、非言語のコミュニケーションを保障することが、言語の発達につながります。
5 子どもが注目していること、興味の有ることに合わせて関わる。双方向のコミュニケーションはそのことによって、生き生きと育つはずです。