ハンドルネーム ya
某公立学校通級指導教室担当教員
言語聴覚士
特別支援教育士(S.E.N.S)
性別 男
■メールはこちら
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
今日も、「WISCの解釈を1時間半で講義してくれませんか」と頼まれました。しかも「言語性、動作性」などと。いつの時代の話でしょう。
断る側も、断られる側も傷ついてしまいますが、丁重にお断りしました。認知心理学や発達心理学、統計学など、様々な知識を動員して、初めて解釈は可能ですよ、とご説明したのですが。
代わりに就学相談の委員会と、言語の研究協議団体との共催で、WISCを含めたアセスメントと相談の進め方の研修を一日日程でやります、と紹介させていただきました。
このほかにも、「特別支援教育について20分で語ってください」という依頼も、日程が合わないという理由でお断りしました。
テーマは「特別支援教育で学力向上!」
なんか違うかなと。
20分で語れるわけがないし、学力テストの平均点をみんなでめざす、という趣旨の「学力向上」と「特別支援教育」とは、全く合わないのです。
研修の中身が、コンビニエンスな方向に行っている気がしてならない。
こうした中、教員の大量退職と若返りにより、先輩方が積み上げてきた財産が継承されない危機感を国も持っているようですね。今後に期待。
私の教室では最近、教育相談を研修の場として、ことばのテスト絵本一つの使い方を含め、一から実技研修をしています。
「テスト絵本」のカバーを外すのは、相談が始まってからではなくて、相談前に外しておいた方が時間の節約になるとか、ページのめくり方まで、細部にわたってです。
掘り下げるべき構音はどの音なのかの判断だとか、メモ用紙に注視せず、子どもの表情を注視せよとか。
教育相談のローカルルール、学術的根拠に基づかない様式も、すべて廃棄しました。
先生方の力がどんどん身についているのを感じています。
やっぱりOJT(実務しながら研修)が一番効果的ですね。
研修で一番身につくのは「教育相談」ですね。
かつて、言語障害教育課程の免許取得のための実習は、「教育相談」が一番ハードルが高く、かつ一番ためになる研修として位置づけられていた、と聞きます。
地道に一歩一歩やっていくしかないですね。
今後もコンビニエンスなノリの研修依頼はお断りします。
構音障害について正しいのはどれか。
a 何度教えても、「リンゴ」を「ゴンリ」と言うものも含む。
b 「ぼ、ぼ、ぼくは」など、はじめの音を繰り返すものは含まれない。
c 自然に改善するタイプと、自然には改善しにくいタイプとがある。
d 年齢が上がれば自然に改善する。
e 住んでいる地域の方言も含む。
① a,b
② b,c
③ c,d
④ d,e
⑤ すべて
***
正答例 2
a
「り」「ん」「ご」のそれぞれの音は発音できており、音順を間違えているだけです。構音操作の問題というよりは、聴覚的把持力、音韻意識(語音を認識する力)の問題である可能性が高いです。
b
吃音の可能性が高いです。吃音と構音障害とを混同しやすいですが、両者は全く異なるものです。
c、d
個人差もありますが、たとえば「サ行」の「シャ行」への置換よりも、「キギケゲ」の歪みなど側音化構音などの方が、一般に自然改善は難しくなります。
e 住んでいる地域の人との間で違和感なく過ごせているのであれば、構音障害とは言いにくいです。
構音障害には様々な定義があるようです。ただ、音そのものの誤りというだけでなく、そのことにより日常生活に支障が生じているかどうかも、重要な視点です。
1
「言語理解100、知覚推理100、ワーキングメモリ100,処理速度100、FSIQ100
以上の通り報告します」
→この報告書では、何がなんだかさっぱりわかりません。
下位検査はどうだったのか? 検査時の子どもの様子は?
検査者の立場での解釈は?
数値は大事ですが、その数値の意味するところが、この報告書では見えてこないのです。
「信頼区間」の記載がないこともルール違反です。数値は幅をもってとらえられなければならないという反省に基づいて、今のルールになっているはずです。
実際には、行動観察から生育歴情報なども総合して解釈しておられることも少なくありません。
外部の関係者が、保護者同意のもと、詳しい状況をお尋ねし、総合的解釈まで行けるような手だてが、別途必要なのでは。
2
「抽象的な思考に苦手さがあるようです。具体的にイメージできる説明の仕方を工夫します」
→主旨はわかりますが、どのような検査結果から、このような手だてが導かれたのでしょうか。
抽象的思考といっても、様々あるはずです。
手だてだけで、検査結果の記載が全くないのも、受け取る側はとまどってしまいます。
3
折れ線グラフの表をポンと渡して終わり。
→これは一番やってはいけないことのはずです。
受け取る側に数値の意味を解釈できる力量があるのか。
なぜその数値になったのかという背景情報や、指導の手だても何もない。
4
「○○の問題もできなかったんですよ」
→その問題は、能力の一部を代表しているにすぎません。
たまたま、その問題ができなかっただけかもしれません。
また、どのようにできなかったのか、検査時の子どもの反応はどうだったのかの情報も必要です。
関係機関の様々な制約があるなか、文書を受け取る側が、より総合的な解釈に近づけるために工夫することは、子ども理解のための正当な行為ではないでしょうか。
また、同じ検査結果でも、解釈には様々あるでしょう。
関係者同士が情報交流し、ディスカッションして視点を補い合う中で、より解釈を正確に、意味あるものにしていくことが大切なのだと思います。
8月中旬の研修会では、このことも話してみようと思います。