ハンドルネーム ya
某公立学校通級指導教室担当教員
言語聴覚士
特別支援教育士(S.E.N.S)
性別 男
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来年度、ことばの教室基礎研修会の講師の依頼を2本受けています。
また、個人的にも基礎的なご質問を頂いていますので、
その回答を兼ねて、少し原稿を書いてみます。
また、構音の指導研修DVDの頒布を中止していますが、
入手したいとのお声もちょうだいしていますので、
DVDの内容を一部引用、掲載する形で、ご要望に少しでもお応えしようと思いました。
よろしくお願いいたします。
では、まず サ行とシの違いについて・・・。
**********************************
「サスセソ」と「シ」は音の種類が違います。
「サスセソ」=「サ行」は、内緒の声(摩擦音)で、
「ス-」という音が元になっています。
内緒の声の「ス」に、有声音の「ア」を続けて言えば、
「ス+ア」=「サ」(子音の/s/+有声母音の/a/ =/sa/ )
となります。
同じように、
「ス+オ」=「ソ」 (子音の/s/+有声母音の/o/ =/so/ )
「ス+エ」=「セ」 (子音の/s/+有声母音の/e/ =/se/ )
「ス+ウ」=「ス」 (子音の/s/+有声母音の/w/ )=/sw/ )
(※w は正確な表記ではありませんが、ネット上の表記の制約のため)
となります。
ところが、「シ」はどうでしょうか。
「ス+イ」=「シ」
でしょうか?
いいえ、
「ス+イ」=「スィ」
です。
「シ」とは微妙に違います。
「シ」は、
「みんな静かにして!」と、内緒の声で、
口の前に一差し指を一本立てて、
「シー」という時の音に、
有声音の「イ」が続くので、
「シ」になります。
「シャシュショ」も同様です。
「シ+ア」=「シャ」
「シ+オ」=「ショ」
「シ+ウ」=「シュ」
つまり、「シ」は「シャシュショ」の仲間です。
「サスセソ」と「シシャシュショ」は、別の仲間です。
最初の声の部分、つまり子音部分が違います。
このことを以下の図で整理します。
(図はクリックで拡大。以下同様)
下のローマ字のUを反対にしたようなのは、
口蓋(お口の中の天井部分)を示しています。
上側が歯のある前方、下側がお口の奥の方向です。
緑色の矢印が、呼気の出る方向です。
点点の部分は、口蓋が舌と接している面を示しています。
空白は、舌と口蓋が接していない部分です。
/s/ つまり、サスセソの子音部分は、
呼気の抜け道が狭くなっています。
一方、シシャシュショ(右の図)では、
呼気の抜け道は、/s/ に比べて広くなっています。
広い抜け道の摩擦音を発音記号で書くと、
/s/を縦に伸ばしたような記号になります。
「ロングエス」と読みます。
この抜け道の狭さの違いが、音に違いを出す主役となります。
呼気の通り道を狭めることを「せばめ」と言います。
ザ行も同様です。
「ザズゼゾ」と、「ジ」は違う仲間です。
「ジ」は、「ジャジュジョ」の仲間だからです。
*****************************
間違い その2 「全IQ」
WISCで、
全IQ 93
言語性IQ 65
動作性IQ 125
と出ました。
曰く
「全IQが93ありますから、心配は何もありません」
*****************************
考察
この事例は2つの点で問題があると思います。
1 IQだけで「心配はない」と判断していること。
実際の子どもの様子、関係機関の情報収集と合わせて
判断することが重要です。
2 言語性IQと動作性IQとの間に差が大きい場合は、
全IQはほとんど意味がない。
他に下位検査間の解釈などいろいろありますが、この辺で。
一つ言えることは、検査結果を解釈するには、
その器具を実際に使って何度も検査を経験し、
検査の内容を熟知しておいた方が、
より正確な解釈ができる、
ということだと思います。
さて、こうした解釈の間違いの以前の問題として、
採点の仕方、計算の仕方に誤りがないでしょうか。
以下のページにはパソコンで計算できるソフトがあります。
手作業で計算するのが本来ですが、
パソコンを使えば間違いは減るでしょうね。
http://snekagawa.hp.infoseek.co.jp/kensyu.html
別にWISCの不勉強を非難するわけではありません。
私も間違うことはありますし、
知らないことは恥ずかしいことではないです。
表題は、徳大寺有恒/著『間違いだらけの車選び』を
もじっただけの話です。(^-^)
ただ、検査を実施したり、解釈する以上は、
保護者や関係者に正確にお伝えする責任はあるので、
ある程度勉強しておきたい、と思っています。
以下のエピソードはほぼフィクションですが、
実際にあった話を少しブレンドしています。
*****************************
間違い その1 「有意差」
1)ある方の検査結果、
言語性IQ 76
動作性IQ 78
と出ました。
曰く、
「言語性より動作性の方がわずかに得意なようですね。
耳で聞くよりも、目で見た方が得意なはずです」
2)ある脳血管疾患の中学生の患者さんのWISCの術前実施結果、
全IQ 60と出ました。
術後、2ヶ月後に再び同じWISCを行ったところ、
全IQ 63と出ました。
曰く
「手術後は成績がよくなりました。手術の成果でしょう」
3)ある小学生のWISCの結果、
群指数では、
VC(言語理解) 85
PO(知覚統合) 85
FD(注意記憶) 82
PS(処理速度) 85
となりました。
曰く、
「注意記憶だけが低いですね。
これは
『軽度発達障害の心理アセスメント』(2005
上野一彦 他編、日本文化科学社)のp44に載っている
「群指数パターンの5」です。
だから、聴覚的な記憶は苦手なので、視覚的な手がかりを
用いてください」
****************************
考察
1)は、言語性IQと動作性IQとの間に数値的な差は「2」あります。
しかしこの「2」は、統計的に意味のあることなのでしょうか?
NOです。統計学的には意味がありません。
仮にタイムマシンで検査実施前に戻り、
同じ検査をもう一回やったとしたら、
同じようなパターンで差がでる可能性は低いでしょう。
2)も有意差はありませんし、あったとしても、
術後わずか2ヶ月で同じ検査を用いると、
患者は前回の時の問題を覚えていて、結果に影響している可能性があります。
3)4つの群指数間に有意差はありません。
したがって「群指数パターン」には当てはまりません。
この『軽度発達障害の心理アセスメント』という本は、
14種類の群指数パターンを提示しています。
しかしどこにも、「群指数パターンは、各群指数間に有意差が必要」とは
書いていないので、グラフがちょっと似ているだけで、
「このパターンだ」と誤解しやすいのではと思います。
でもこの本全体をよく読めば、「各群指数間で5%水準で有意差がある」
ことが前提になっていることがよくわかります。
「5%水準で有意差がある」とは、
偶然にこの差が出る可能性が5%としかないということ。
それだけ信頼性が高いということ。
2月5日、17日にメール頂いた岐阜県の先生。
私も6日にはすぐお返事したのですが、
届かなかったようです。
以下に、返事を載せます。
****************************
岐阜県○○○
○○ ○ ○ 様
初めまして。メールありがとうございます。
北海道△△の△△と申します。
○○さんの不安ととまどいの気持ちが伝わってきました。
何かのお役に立てば幸いです。
ラ行ダ行のプリントは、サイズが大きい(2MB)ですので、
別途 データ便というメールをつかって送ります。
指示された通りにたどるとファイルにたどりつけます。
カタカナの異同弁別のパスワードは、
です。
(ブログ上では非公開)
DVDは申し訳ありませんが、現在頒布を中止しています。
いずれ、別の内容のものを新たに発行する計画があります。
それに代わる物としてというわけではありませんが、
最近構音の指導についての研修ビデオページが、
国立特別支援教育総合研究所で開発されたようです。
http:// ????????????????????
(ブログ上ではアドレスは削除します。
まだ作成途中のページのようなので)
まだ試作段階のようで、改訂はするようですが、
内容は結構充実していると思います。
ビデオも実際の指導を見ることができてよいのではないかと。
今後とも何かありましたらご遠慮なくご相談ください。
文字だけのコミュニケーションなので限界はありますが、
私にできることがありましたら。
以上
*****************************
私は、○○先生のように悩まれている先生や当事者、関係者の
ためにお役に立ちたいと思っています。
お返事は必ず書いています。
○○先生、メール事故の原因を探ってみてください。
ご自分にメールして届くかどうか、
返信用アドレスに誤りはないか、
迷惑メールの設定に問題はないか。
(ちなみに返信タイトルは
「メールありがとうございます」
でした)
詳しい人に見てもらってくださいね。(^-^)
事故メールで返信がない方は、
あきらめずに再送してみてくださいね。(^-^)
校内でのことばの教室の発表が無事終わりました。
発表後はよい質問がたくさん出て、
発表した甲斐があったというものです。
実際の指導場面のビデオが、やはり反響がありました。
で、うちの学校のことではないですが、
「通級型の取り出し指導」と言うと、
マイナス面が気になる向きがありますね。
「インクルージョン教育は、分離教育ではない」
このことから、通級型の取り出し指導は、
「分離教育」であり、インクルージョンに反するとの意見があります。
しかしながら同時に、次のことも言えるわけです。
「インクルージョン教育は、統合教育でもない」
通常学級にお客さん状態で座っていればいいわけでもない。
「インクルージョン教育」は、
「分離教育」、「統合教育」の両者を
弁証法的に止揚(アウフヘーベン)
したところにあるのですよね。
インクルージョンに近い通級の意義、あり方については、
実は文科省通知が一番正確で妥当ではないかと思うのです。
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/06050817.htm
別に国に忠実でなければならないと主張する意図ではありませんが。
・「通級による指導を行うに際しては、必要に応じ、校長、教頭、特別支援教育コーディネーター、担任教員、その他必要と思われる者で構成する校内委員会において、その必要性を検討する(後略)」
→通級担当だけで、通級妥当を判断するわけではないですね。
・「通級による指導の対象とするか否かの判断に当たっては、医学的な診断の有無のみにとらわれることのないよう留意し、総合的な見地から判断すること。」
→診断があるから、障害があるから、ただちに通級、とは誰も言っていません。
・」学習障害又は注意欠陥多動性障害の児童生徒については、通級による指導の対象とするまでもなく、通常の学級における教員の適切な配慮やティーム・ティーチングの活用、学習内容の習熟の程度に応じた指導の工夫等により、対応することが適切である者も多くみられることに十分留意すること。」
→通級が手段の全てではないですね。
こうした主旨は、基本的には、ことばの教室が
過去からずっとやってきたことではないかと思うのです。
私は最近、各発表場面で、発表内容をビデオにしてしまって、
当日上映するという手法をよく用います。
理由は
1)予め言いたいことをまとめて録音しておくことで、
言い落としや、話題の脱線、早口を防ぐことができる。
2)録音した内容を自分で聞いてみることで、
内容の正確さ、妥当性などを検証し、録音し直せること。
3)万が一、発表の都合が悪くなっても、
主催者に録画したDVDだけ渡しておけば何となる。
また、似たような発表依頼を他から受けた場合でも対応しやすい。
作り方は、
1)まずパワーポイントを作成する。
2)パワーポイントの説明音声を画面ごとに録音する。
3)パワーポイントの画面をハードコピー(画面まるごとを画像ファイルとして保存)
4)ムービーメーカーを用いて画像と音声を編集する。
5)DVDに焼く!
ちょっと面倒ですが、慣れると簡単です。
「構音の指導研修DVD」もこの方法で作成しています。
さて、ことばの教室での実践を校内で発表する機会を得て3年目。
今年は私が担当することになりました。
ことばの教室では何をやっているのかイメージがつかみにくい、
というのが通常学級などの先生方の実態だと思います。
また、今年は実際の指導内容を示して欲しいという要望が出ていました。
したがって、今回は指導場面のビデオをできるだけ取り入れることにしました。
ことばで説明するよりはるかにイメージしやすいはずです。
通常学級の先生方との連携は、実際の指導を見て頂くのが
実は一番有効なのではないかと思っています。
ビデオの内容は、最近ブログに掲載した教材を用いた場面が中心です。
全部で35分。
第1部として実際の指導場面を、
第2部として通級児童の各種統計を提示しながら、
今後の課題を述べています。
このビデオは、「言語発達の指導研修DVD」に発展させることも意図しています。
教室の先生方の決済て、承認を得て本番に臨む予定です。
今年は初日から連日の除雪作業となり、
筋肉痛の状態でこの記事を書いています。
改めまして、あけましておめでとうございます。
昨年は、私のつたないブログを
読んで頂きありがとうございました。
今年も、みなさんにご指導、ご助言を頂きながら、
役に立つブログをめざしたいと考えていますので、
どうぞよろしくお願いします。
思えば、
2000年1月1日のホームーページ開設の時から、
私の情報公開歴は10年目に突入しました。
その間、
時には励まされ、時には考えさせられる
レスポンスやコメント、メールを頂き、
本当にこれまで皆さんに支えてくださったと
感無量です。
昨年のブログ記事も改めて見直してみると、
2008年は、私にとって、
「支援の具体化」がテーマであったように思います。
『構音の指導研修DVDの発刊』を筆頭として、
具体的な教材開発と紹介、
構音指導の具体的な指導方法などに
力が入っていたと感じます。
ブログには、
能書きを載せるよりも、
具体的な教材を紹介した方が
アクセス数がアップすることも判明しました。
世の中に、具体的な内容を求める方々多い
ということの裏付けではないかと思います。
かつて私は、
具体的な指導方法について人に伝えることには慎重でした。
「その通りにやればよい」
「その通りにやったのに、成果が上がらない」
との誤解を招く可能性をおそれたからです。
しかし、
その教材の使用目的、
どんな子にフィットするかを明示することで、
指導方法の前にアセスメントが重要であること、
またアセスメントのあり方を
伝えることが可能ではないかと思ったのです。
そのことにより、自力でアセスメントして
自力で教材を工夫し、
「その通り・・・」を超えることができると
感じたのです。
昨年はそうできたと、信じたいです。
今年も、どこかの誰かのために、
何かのお役に立てばと思います。
また、皆様方から多くを学びたいと思っています。
更新が滞ることも多々あるかと思いますが、
どうぞ長い目で見て頂ければ幸いです。