ハンドルネーム ya
某公立学校通級指導教室担当教員
言語聴覚士
特別支援教育士(S.E.N.S)
性別 男
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第10回 言語聴覚士国家試験 4
午後 第2問
誤っている組み合わせはどれか。
1. 広汎性発達障害 ーー TEACCH
2. 中枢性聴覚障害 ーー 人工内耳
3. 発達性吃音 ーー 系統的感作法
4. 口蓋裂 ーー 補綴的発音補助装置
5. 視覚聴覚二重障害 ーー 指点字
***
ヒント
TEACCHは構造化。自閉系等のお子さんに適用。
「TEACCHと言えば、絵カード」というのは単純であって、聴覚刺激が有効なら、聴覚刺激で構造化します。その子の認知特性に合わせた構造化がTEACCHの本当の意味。
中枢性、つまり脳の問題による聴覚障害なら、いくら補聴器や人工内耳を用いても無意味。
「人の言葉が聞き取れない」の原因には色々あるので、単純にとらえてはいけません。
吃音に行動分析的な系統的脱感作は、有効な場合もあるでしょう。
口蓋裂等が原因で、鼻から抜けるような発音になっていている場合、パラタルリフトなどの補助具を用いて、鼻咽腔閉鎖機能を補う場合があります。
二重障害は、ヘレンケラー。
第10回 午前 第37問
パラトグラフィで異常がみられるのはどれか。
1. 鼻咽腔閉鎖不全
2. 口蓋扁桃肥大
3. 側音化構音
4. 声帯過内転
5. 声門破裂音
***
ヒント
上の図のことをパラトグラムと言います。
口蓋と舌との接触エリアが、●で示されています。
口蓋に電極をつけて、舌が接したら電極が流れて、●で表示されます。
たとえば、「シャ」の発音の時、正音では呼気が正中から出ます。
しかし側音化構音では、舌と口蓋とが密着し、呼気は横から漏れ出ます。
3以外の選択肢は、パラトグラフィーでは異常が検出できません。
なぜなら、鼻咽腔閉鎖不全は、口蓋帆というもっと奥の部分。
口蓋扁桃も奥の部分。
声帯、声門は喉ですので、パラトグラムのエリアの範囲を超えています。
ちなみにパラトグラムの機械は100万円単位で、ことばの教室で買えるものではありません。
ことばの教室では、発音の誤り具合、構音時の舌の動き、鼻息鏡で呼気の向きや、鼻からの息漏れがないかどうかなどで、歪み音の鑑別を行います。
日頃から、どんな音だと、どんな仕組みで歪んでいるのか、判断に慣れていくことが大切です。
研修を積み、慣れてくると、聴印象だけで、だいたい何が原因で歪んでいるのかわかるようになります。
原因がわかって、初めて指導の手立てが検討できます。
被虐待児症候群について誤っているのはどれか。
空気砲でジャンプスキー選手に見立てた紙片が跳び、「K点越え」なるか。
空気砲は、親の会でお世話になっている先生が書いた、以下の文献を参考に作りました。
『作ってあそべる製作ずかん 3・4・5歳児の保育に』
今野道裕 著、2013、学研教育出版
http://hon.gakken.jp/book/1340587000
初めは空気砲を作るだけでしたが、ジャンプスキーや、サッカーなど、
子どもと話し合いながら、いろいろな遊びにアレンジしていきました。
幼児の遊びについて誤っているのはどれか。
a. 保育や教育の場では遊べない子どものことが心配されている。
b. ごっこ遊びには生活の流れについてのスクリプト的知識が必要である。
c. いざこざは遊びの楽しさを壊すので大人はすぐに介入した方がょい。
d. 遊びを通して認知発達を促すことを認知行動療法と呼ぶ。
e. ある物を別の物に見立てるには象徴機能の発達が必要である。
第73問
保護者支援として適切なのはどれか。
a.障害児・者の当事者団体を紹介する。
b.言語訓練についてのセカンドオピニオンを希望した場合、評価と指導経過の資料を作成する。
c. 就学に関する相談に際し、 子どもの知能指数によって特別支援学校を勧める。
d. 保護者の要望に基づいた指導をするように担任に要望書を送付する。
e. 保護者に知能検査の意味を説明し同意を得てから検査を実施する。
1. a、b、c
2. a、b、e
3. a、d、e
4. b、c、d
5. c、d、e
***
ヒント
知能指数だけで就学先を勧めるのは問題です。知能数は確かに情報の一つではありますが、検査時の行動観察などから、その数値の解釈をすることが大切です。
また、検査結果だけでなく、日常の様子などのアセスメント情報も含めて総合的に判断し、就学先について情報提供するのでなければなりません。
保護者の要望だけに基づくのではなく、科学的、客観的な立場で、担任と連携する必要があります。
午前 第97問
老人性難聴で正しいのはどれか。
a. 聴覚伝導路の末梢器官の変性による。
b. 聴力程度に比べて語音明瞭度が低い。
c. 騒音下の会話了解度が低下する。
d. 聞こえについての本人の訴えは初期の段階から多い。
e. 低周波域の聴力低下が最初に出現する。
1. a、b
2. a、e
3. b、c
4. c、d
5. d、e
***
ヒント
子ども臨床から離れて、老人性難聴の問題ですが、各種難聴の理解は、子どもの難聴の理解にも役立つでしょう。
老人性難聴は高い周波数がきこえにくくなります。
だから、全体的な聴力の数値の低下は少なくても、特定の語音が聞き取りにくくなります。
蝸牛(内耳のカタツムリの部分)にある聴覚神経は、入り口付近が高い音を感じ取り、蝸牛の奥に行くほど、低い音を感じるように神経が並んでいるようです。
加齢により、入り口の部分から変性していくということでしょうね。
後迷路性難聴、心因性難聴など、このほか難聴には様々な複雑な背景があります。
単純にはとらえられないのですね。
事態は複雑なようなので、ゴーストライターの有無の是非については論じません。
ただ、難聴について、一部誤解のある報道があるようなので、当事者の一人として言わなければと思いました。
・伝音性難聴=耳から入った音が、鼓膜→耳小骨→蝸牛の聴覚神経に届くまでの問題です。音の震えが物理的に伝わる段階。
・感音性難聴=聴覚神経から脳に届くまでの問題です。電気的な伝達の問題です。
この2つの鑑別のためには、気導聴力検査と骨導聴力検査を組み合わせます。
気導は聴力レベルが低くて、骨導に問題がないなら、音の震えの物理的な伝達の問題が疑われます。
骨導にも聴力低下が見られるなら、感音性難聴を疑います。
両方を合わせ有する方もいます。
必要に応じて、他の検査も組み合わせて総合的に診断します。
ちなみに、音の歪みがある場合、「ピー音」も歪んで聞こえることがあります。
しかも周波数によって、歪んだり、歪まなかったりすることもあるでしょう。
私の場合、調子がわるいと、125,250,500Hzだけが歪んで聞こえることがあります。
でも「聞こえる」=「正常範囲」と判断されてしまいます。
1 「障害者手帳の有無」と、「障害の有無」とは一致しません
→聴覚障害として認定し、手帳交付のためには一定の基準にあてはまらなければなりません。
手帳交付の対象とならず、補聴器を装用している子はいっぱいいます。
その場合は行政の支援の対象とならず、補聴器は全て自己負担で購入です。
2 感音性難聴で、音に歪みがある場合、補聴器が有効でない場合が多くあります。
→補聴器で音を大きくしても、歪んで聞こえることに変わりはありません。
両手で口をふさぎ、「ゾーサン」と言って、人に聞かせてみてください。
「いまのは、ゾーサンでしょうか、ローソンでしょうか?」
聴覚障害の理解のための疑似体験の一つです。
音を大きくしても聞き取りはよくなりません。
3 大声で話せば聞き取りやすくなるわけではありません。
大声で話すと、後続母音は大きくなりますが、子音が大きくなるわけでないので、余計に聞き取りにくくなります。
たとえば「カサ」は、発音記号で /kasa/ と書きます。
大声にすると、子音部分の /k/ /s/ よりも、 /a/ の部分が強調されるので「ああ」のような感じにしか聞こえません。 / k / も /s/ も、無声子音(声帯を震わせない音)なので余計です。
4 会話の中で、手話を必要とせず、一部聞き取れる場合があります
「これが、HIROSHIMA ですね?」 → 「そうですね」
という会話が成立したから、聴覚障害ではない、という鬼の首をとったような主張がありますが。
場の状況から、「これが、HIROSHIMA ですね?」と尋ねられたのだろうということがわかれば、返事ができるわけです。
「たとえ、『これが、いろいま でえね」のように聞こえても、おそらく質問者はこう質問したのだろうと推理できるわけです。
作曲について会話したときに、目の前の譜面について尋ねられたら、ほとんど質問の内容は限られるわけです。質問者も譜面に視線を向けながら質問していますし。
そもそも、机の上にHIROSHIMAの譜面が載っているということは、載せるまでの経過があるわけです。
「譜面を見せて頂けますか?」
というやりとりを事前にしなければ、机の上に譜面が載っているわけがないのです。
そうしたやりとりの経過も、会話内容の推理に大きくかかわります。
逆に言えば、会話に脈略がなく、突然違う話題を持ち出されたら、とてもわかりにくいでしょう。
それは聴覚障害のない人にとっても同様ですが、聴覚障害があれば、そのわかりづらさはとても大きくなります。
このように聴覚障害者は、場面の状況、発話者の口元などから、いつも必死で会話内容を推論しているわけです。他の人より何倍もエネルギーを使います。だから疲れます。
でも手帳の対象にならないのです。
むしろ問題なのは、手帳交付の対象にならない障害の程度に対して、行政が手をさしのべていないところにあるのではないでしょうか。
午後 第87問
吃音について正しいのはどれか。
1. 原因不明の構音障害である。
2. 学童期以降は発症しない。
3. 遅延聴覚反応(DAF)を用いると発話速度が速くなる。
4. 斉読で吃音頻度が減少する。
5. 適応効果がない。
***
ヒント
吃音は構音障害とは違います。
吃音は、出だしが詰まるなどの話し方のリズムの障害であり、構音障害は、発音がうまくいかない障害を指します。
吃音は、学童期前から発症します。3歳前後、就学前後の発症が多いです。
DAFを用いると、発話速度は遅くなります。不自然に遅くなります。
斉読で症状が緩和する場合があります。
何度もリハーサルすることで、症状が軽減すること(適応効果)があります。
ちなみに最近、幼児期のお子さんに適用される「リッカムプログラム」が脚光を浴びていますが、統計上、その効果は、「環境調整」と有意差がないという報告もあります。
新しい学説なので、色々と調べた上で、導入の可否を検討する必要があるでしょう。
午前 第79問
小児の構音訓練について正しいのはどれか。
1. 口蓋化構音の訓練には聴覚刺激法が有効である。
2. 訓練開始前から誤り音を自覚させる。
3. 声門破裂音の訓練では二重構音に注意する。
4. 文の音読が正しくできると日常会話に般化する。
5. 言語発達障害の合併例では構音訓練から始める
***
ヒント
口蓋化構音や側音化構音、声門破裂音、鼻咽腔構音などの歪み音の場合、正しい音を聞かせてまねさせるという練習方法は、無謀という他はありません。
そんな練習法で改善するなら、わざわざことばの教室で専門的指導を受ける意味がありません。
訓練前から誤りを自覚させることが良い場合もあります。
特に通級の動機付けのために初期から自覚させるべきとの主張も過去にありました。
しかし、歪み音は特に低学年では自覚が難しく、本人に困り感がなければ納得できないでしょう。
ましてや、文字を見せて「キ」が言えないから練習するんだよ、はい、「キ」の文字を読みながら練習しましょう、というのは、既に学習した「キ」の歪み音を強化する恐れさえあります。
動機付けは違う内容から入った方がいいです。特に低学年時には。
「楽しいから通う」で、どうしてだめなのでしょうか。
単音節で正音が出せるようになってから、初めて「実はそれが「キ」なんだよ」と告知するのが定石。
文の音読までは正音でも、会話になると歪みが頻回になるお子さんがいます。
通級終了のめやすは、会話レベルでもおおむね改善していることです。
言語発達遅滞を伴っている場合、遅れへのフォローを優先する場合が多いです。
もちろん、構音指導がフィットする例もありますが、「構音障害があるから、ただちに構音の指導」ではありません。
その子にとっての「適時、適切、適量」でなくてはなりません。
声門破裂音とは、たとえばカ行が、喉を締め付けるような「アッ」というような音に歪んでいるものです。指導の順序は、喉から距離的に一番遠い音、つまり舌尖音から行うのが定石。
その際、喉でも舌先でも、二重に構音していないか、慎重に確認する必要があります。
午前 第70問
話しことばのある自閉症児の言語特徴について誤っているのはどれか。
a.自分の興味があることはよく話す。
b. 共感的言語表現が乏しい。
c.コミュニケーション意欲は発達しない。
d. 初期に獲得される語彙は健常児と同様である。
e. 会話での間合いの取り方がずれる。
1. a、b
2. a、e
3. b、c
4. c、d
5. d、e
***
ヒント
自閉症のあるお子さんは、相手の話すことを聞かずに、あるいは最後まで聞かずに、一方的に話すことがあるので、間合いの取り方のずれが見られます。
でも、間合いがずれていなくても(むしろとても上手でも)、社会性、コミュニケーションの困難など、自閉症の状態を示す子も多いです。
コミュニケーション意欲は発達しない、は言い過ぎですね。
そのこの興味関心に合わせて、その子なりのコミュニケーションの取り方はあるでしょうし、
少しずつでも育っていくものです。
そうすると、c.eが誤りと言うことになりますが、選択肢にありません。(笑)
ということは、dが誤りがということでしょうか。
でも、自閉圏のお子さんの場合でも、3歳児健診までは通常のことばの発達を示すことも少なくありません。ということは、この問題では「自閉症児」の定義を狭く解釈し、アスペルガー症候群とは別としてとらえる必要がありそうです。
ならば、会話のずれも生じやすい。
5年前の問題ですから、「自閉症スペクトラム障害」の概念はまだ整理されいていないですね。
午前 第46問
意味発達の指標はどれか。
1. 喃語(babbling)の発達
2. 汎用(over-generalization)の出現
3. 共同注意(joint-attention)の成立
4. 心の理論(theory of mind)の理解
5. 音韻意識(phonological awareness)の成立
***
ヒント
「喃語」は音遊び。
「共同注意」が意味の指標のような気もしますが、同じ物を見ている時に、そこに「意味」を見いだしているのかは別問題。「意味」より前の段階ですね。
「心の理論」は、5歳半前後に獲得されていきますから、「意味」を理解するずっとあと。
「音韻意識」は、「たまご」は3つの音からできている、と語音を分解する力のこと。「意味」とは無関係。
ある物事が、他の場、物、人にも同じように適用されるのだ、あるいは違うのだ、がわかるのが「意味」の理解。
ズボンを「はく」と言うのは全国共通ですが、北海道では、手袋も「はく」と言います。
体の長い部位に装着するという意味では、手袋は「はく」ものだよなあと思います。
手袋が「はめる」なら、ズボンや靴下だって「はめる」でしょう、と。
その「ことば」の意味の指し示す範囲は、どこからどこまでか、どこで線を引くか。
構造主義。
それが「意味」ですね。
そう考えると、「意味」とは「言語」ですね。
「言語」とは「汎用」ですね。
午前 第56問
純粋語聾で障害されるのはどれか。
1. 純音聴力
2. 音源定位
3. 音楽の認知
4. 語音の認知
5. 環境音の認知
ヒント
耳から入る方が得意とか苦手とか言われますが。
聴覚にも、いろいろな聴覚があります。
・車の音や風の音などの環境音
・ことばの音声である語音
この2つの認知は別物です。
だから、ことばの理解は苦手でも、美しい演奏は楽しめます。
音源定位や音楽、純音(ピー音)、環境音は、全て、ことばを聞いて理解する力とは別ものです。
「純粋語聾」は、純粋に音声のことばを認識する力だけが低下していること。
環境音認知には、原則として問題はありません。
もちろん、「聴力」が低下していると、環境音も語音も聞き取りにくくなります。
「聴力」と「聴覚」も全く別物。
「プリンタをつないだのに、パソコンが認識しない」
物理的な「結線」と、「認識」とが別なのと同じ。
「純粋語聾」は失語症の用語ですが、LDや言語発達遅滞、などのモデルを検討する際に参考になります。
第12回午前
第71問
生活年齢6歳で精神発達3歳レベルの言語発達遅滞児の評価項目で重要性が低いのはどれか。
1. 対人相互干渉
2. 言語理解
3. 言語表現
4. 非言語性知能
5. 書字
***
ヒント
「文字の読み書きができないから文字の指導」となってしまいます。これが学校教育の文化でした。(過去形?)
私も今の仕事に就く前には、おおざっぱに言って、「生活年齢」と「発達年齢」という二つの年齢があるということを知りませんでした。
発達的に3歳であれば、通常発達の3歳の子に、文字を教えることが、いかに子どもにとって負担が大きいか、と想像できるはずです。
ならば、文字の読み書きの前に、聞く、話すの指導の方が大事だな、遊びを通してが大事だな、となるはず。
特別支援学校の対象者はどれか。
a.病弱者
b.聴覚障害者
c.言語障害者
d.情緒障害者
e.肢体不自由者