ハンドルネーム ya
某公立学校通級指導教室担当教員
言語聴覚士
特別支援教育士(S.E.N.S)
性別 男
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当教室では、以下の約束事で、作成することになりました。
***
1 各目標は、支援者の視点ではなく、子ども本人からの視点で書く。
例)
×「○○させる」
×「○○体制を強化する」
○「○○できる」
○「○○の支援のもとで、△△ができるようになる」
2 目標設定は、支援目標→年度目標→短期目標と、下位に行くほど具体的にする。
例)短期目標
×「流暢なことばで話すことができる」
→○「絵の説明課題で、助詞『が』を用いて話すことができる」
→○「吃音の発生時には、一度緊張をゆるめることが自分でできるようになる」
×「発音が改善する」
→○「シ音について、自由会話レベルまで正音が出せる」
→○「舌平らが安定してでき、『ジ』が単音節レベルまで安定して出せる」
(どの音がどのレベルまでできるのか、を具体的に書く)
※ あとで評価がしにくい目標設定は無意味。
3 通級の支援目標は「発音が改善すること」そのものではなく、発音が改善する「ことによって」スムーズな言語コミュニケーションがとれるようになることが目標。
4 無理な目標設定は行わない。達成しやすい目標を設定する。
週の限られた通級時間に見合った目標設定にする。
5 目標も手立ても、その時によって柔軟に変更ができる。一度作ったら二度と変えられないわけではない。保護者や同僚と相談の上で変更を検討する。
6 各目標は、「自立活動」が主であり、「教科の補充指導」を主たる目標にしてはいけない。
例)×「九九を間違えずに暗唱できる」
×「2桁-1桁の繰り下がりの計算ができるようになる」
7 他の職員に予め見せて、助言を受けてから保護者に見せて、話し合って同意に至るのが望ましい。
***
構音の指導目標の設定のためには、現状の構音の状態を評価しなければなりません。
どの音がどのレベルから障害音となっているのか。
ただばくぜんと「不明瞭」とか、「カが発音できない」という曖昧な評価では、指導計画は策定できません。
つまり、指導計画を策定する作業そのものが、実は子ども理解を深める過程です。
「まずは作ることに意義がある」
亡くなった先輩のことばは、「形を整えなさい」という単純な意味を指すのでなく、「作成を通して、子ども理解、知識の学習のために、もがきくるしみなさい」という意味を指していたのでした。
だから、形だけをまねするのは無意味なのです。
今年度の当教室への教育相談は、例年より多いのだそうです。
前任校ではこの程度のペースでしたが、当教室としては既にハイペースです。
その原因のひとつとして、家庭訪問時期の前に、教室パンフレットを学級担任に配ったこと。
家庭訪問時に教育相談を紹介してもらい、つながるケースが多いようです。
支援を必要としているのに、つながっていないケース、支援の頻度や程度と、子どもの実態とが合っていないケースが多いように感じています。
措置判断のシステム、相談のシステムがうまく機能していなかったように思われます。
近眼の子にめがねを与えるように、特別の支援が当たり前のように提供されるように、システムを整えていく必要を感じています。
ヘルプを求めている子ども達のために。
「個別の指導計画」は、指導目標と手立て、評価から構成されます。
子どものアセスメント情報を含むものは、本来、「個別の指導計画」とは言いません。
「個別の教育支援計画」と言います。
当教室では今年度から、通級による指導における「個別の指導計画」を策定しています。「通級終了時点」の目標である「支援目標」、年度ごとの目標の「年度目標」、そして学期毎の「短期目標」の3つの目標を設定。
手立てや留意点も加えました。
各担当が案として作成した「個別の指導計画」をみんなで検討しました。
教材や手立ては、二の次です。
「目標」が、その子の主訴や困り感、実態に合ったものかどうかが、もっとも大事です。合っているかどうかの判断のために、生育歴を深く掘り下げたり、検査結果の解釈をしなおしたりしました。
学級担任からの情報収集も整理しました。
発達についての知識も動員しなければなりません。
アセスメント情報が不足していたために、目標設定を保留にした事例もありました。
「指導計画」の検討は、実際には「子ども理解」の検討でした。
教材は何でもいいのです。
それがどんな指導目標のために使われるか、それが問題だからです。
目標設定のためには、情報収集から問題の仮説の設定という、子ども理解の一連の過程を経なければならない、ということがメンバー同士で共有できたのではないかと思います。
それが共有されたこと自体が、計画の完成度以上に大事なことだったと感じました。
構音指導では、一度に複数の種類の音を指導してはならない、という基本的な原則があります。
(波及効果をねらう場合など、例外あり)
また、ある音が一定レベル定着しなければ、他の音に入ってはならないという原則もあります。
たとえば、「イキギケゲシチジリニヒ」にそれぞれ側音化構音のあるお子さんがいます。
摩擦音系の「シ」を舌出しから始めて、そこから母音の「イ」を抽出し、他の音の指導につなげていくのが第一選択になります。
この際たとえば、「シ」の指導と同時並行的に、「キ」の指導をすると、こどもが混乱してしまいます。
「シ」が、単音節→無意味音節→単語→短文まで定着してから、他の音の指導に入るのが原則です。
しかし、子どもによっては、単語レベルまでは正音が出せても、2語文レベルになると、
途端に歪みが現れて、いくら練習をしても定着しがたい、という場合があります。
原因のひとつとして、舌の緊張が取り切れていない場合が考えられます。
しかし、WISC-4や、他の検査結果から、2語文になると、聴覚的な把持、短期記憶、ワーキングメモリが容量オーバーになることが示唆される場合もあります。
単語を2つ記憶にとどめながら、しかも発音に気をつけて、ということのハードルが高すぎるのです。
この場合は、「短文レベルまで」という目標を見直して、それぞれの音が「単語レベルまで、とりあえず」定着を図るよう、短期指導目標を修正することが考えられます。
側音化構音の指導は長期にわたることが多いです。
それぞれの音が、たとえば「単語レベルまで」定着する頃には、その子のワーキングメモリの容量も増えて、2語文以上に耐えられるようになっていることをねらうわけです。
単語レベルでも、様々な難易度のバリエーションが組めます。
音の「わたり」だけでも、難易度が変わります。
また、あまり使わない単語に比べて、いつも言い慣れている単語は、癖が定着していますから、難易度が高くなります。
「衝動的に行動する」という見立てで一致していても、子どもによってその背景が異なることがあります。
脳障害のひとつにこんな現象があります。
つまり、左手では靴下を脱ごうとし、右手では靴下を履こうとする。
ふざけているわけではなく、意思から手の動きに至るどこかのプロセスに障害があるわけです。
トランプで神経衰弱をするとき、
1)2枚ずつしかめくれないのに、3枚目をめくってしまう。
2)一枚めくってすぐ戻し、あと2枚めくろうとする。
などの状態が見られたとき、それが単に「衝動性」とか「ずる」というのではなく、そもそも、意思から行動をプログラミングし、実行する過程に困難があるのかもしれません。
子どものいつもの様子と重ね合わせて、それを見分けることが重要です。
もちろん重複する場合もありますし、ADHDの機序の仮説も様々ありますが。
行動の背景の違いによって、アプローチは変わってきます。
いずれにせよ、子どもの悪気がなくても、そうやってしまう。
「まちがえちゃったね。大丈夫だよ」
と言ってあげたいです。
そして、間違えたなら、それを責めるのでなく、事後対応をほめること。
http://www.nichibun.co.jp/kobetsu/technicalreport/
によると、GAIとCPIや臨床クラスターも含めた、WISC-Ⅳの解説本が今後出てくるようです。
個人的には目にするものですが、日本語版でのWISC-Ⅳでのデータが今後手に入ることになりそうです。
子どもの特性をより深く理解するために、こうしたことは使われていくことを願います。
通級担当の研修の王道は「ケース会議」と「OJT」です。
講座でいくらがんばってお話ししても、実際の指導に結びつきにくいです。
実際に担当しているお子さんについて、多様な視点、専門的な視点で検討し合うことにより、子どもの見立て方を深めることにつながります。
また、「実際の指導の様子を見たい」などのニーズもあります。
実務の中で研修するOJTの要素もからめて、ケース会議後に、ケースに関連した実技研修もイメージしています。
新しい先生への支援も、主要なテーマです。
教員の「個性」も大事ですが、まずは基礎基本をしっかり学んで、その上での「個性」でなければ、それは単なる「我流」、「思い込み」にすぎません。
その意味で、熱心に勉強する新しい先生の実践は、何十年も教職を経験している先生の実践よりも、優れている、と感じることが少なくありません。
毎年、熱心に学ぼうとする先生がたくさんおられることをうれしく思います。
***
平成26 年度 夏季 臨床研修会(自主研修会)開催要項
1 目的
(1)ことばの教室、通級指導教室の新しい担当者を含め、研究協議などを行うことで、地域の言語障害教育、通級指導の教育の質の向上を図る。
(2)通級担当以外の関心のある方とも交流を深め、特別支援教育における地域の連携に寄与する。
2 主催 ○○言語障害児教育研究協議会
3 期日 平成26 年7 月25 日(金)~8 月18 日(月)の期間のいずれかの日(希望をとって決定)
(各長期休業中とも、最大2 回まで)
4 日程
8:00~9:00 個人相談・施設見学、文献閲覧など
9:00~10:00 ケース会議・講座など
12:00~13:00 昼食・休憩
13:00~16:00 ケース会議・講座など
16:00~17:00 個人相談・施設見学、文献閲覧など
5 会場
1)○○小学校
2)5 名以上の希望のある場所(○○管内。ただし、1 名以上は会員であること)
6 内容
1)ケース検討(各自持ち寄ったレポートを元にケース検討)
2)希望により講座、個人相談
7 講師・助言者 ya(○○小学校ことばの教室)
8 会費 ○○言協会員 無料、 非会員 300円
9 用意するもの
○A4サイズの簡単なケースレポート1枚×人数分(発表は任意。無でも可)
※レポートは別紙様式を参考にし、保護者の同意を得る。
○飲食物(各自ご用意ください。参加者で希望により外食もあり)
10 申し込み方法 別紙に記入し、7月2日(水)までFAX、またはメール送信する。
11 その他
(1)職員派遣依頼の公文書は、日程の決定後に改めて会長名で送付する。
(事務局の決済を経て、呼びかけ人が発送事務を行う)
(2)本事業収入は、○○言協会計の収入とする。
(3)吹雪や事故等で開催が中止になった場合は、呼びかけ人から教室代表へ連絡する。教室代表は、各教室職員に連絡して頂く。
(4)本事業は、○○言協会則第9 条、および臨床研修会細則に基づく。また「新しい先生のための旅費措置事業」対象事業に該当する。
『言語聴覚療法臨床マニュアル 改訂第3版』協同医書出版,2014
http://www.kyodo-isho.co.jp/cgi-local/search.cgi?id=book&isbn=978-4-7639-3049-1
→カラー刷りになったからというだけでなく、内容も第2版よりわかりやすくなった印象です。
高い本ですが、「安い、わかりやすい本」よりも正確で、信頼性が高いです。
『エッセンシャルズWISC-Ⅳによる心理アセスメント』カウフマン他著、上野一彦監訳、2014、日本文化科学社
http://www.nichibun.co.jp/book/detail/?id=77
→WISC-4の専門書の第2弾。『WISC-Ⅳの臨床的利用と解釈』に比べて読みやすいです。
解釈の仕方について、2冊とも読んで、その違いを比較することが有益と思います。
検査の仕方や解釈の誤りやすい例が列挙されていて、実践的な内容です。
2冊とも読み応えがありますが、ぜひ教室に一冊ずつおいて、長期休業中でもじっくり読みたいところです。
『きこえとことば研修テキスト』全国公立学校難聴・言語障害教育研究協議会,2014
http://www.nangen.jp/sub4.htm
ことばの教室の経験の浅い先生のために作成されたテキスト第2弾。
会員でない教室にも、名簿があれば全て送るという良心的な取り組み。
今後は、全難言協の「はじめのいっぽ」でも、このテキストをベースにするようです。
北海道でも、新しい先生のための「言難ABC」を開講していますが、この文献にも目を通しておくといいでしょう。
構音障害のサンプル音声を聴くなどして、日頃から耳のトレーニングをすることは大事です。
歪み音のサンプル音声は、私の『構音の指導研修DVD』のほか、
『口蓋裂の言語検査(言語臨床用)DVD付』日本コミュニケーション障害学会口蓋裂言語委員会が秀逸です。
耳が慣れてくると、子どもの発音を少し聞いただけで、その分類や、舌の動きの特性なども推測できるようになります。
慣れるまでに一年はかかると思いますが、その音を聞いたときに、舌がどのような動きをしているのか、音声と映像とを結びつけて覚えておくことが大事です。
子どもとの会話で、気になる音があった時には、すぐメモすることが大事です。
忘れてしまうからです。
子どもに悟られないように、発音記号で書くのが基本です。
慣れるまではカタカナでも仕方がありませんが。
これらの正確な評価があって、初めて構音の適切な指導の手立てが構築できるのです。
ケースレポートをみると、この評価の段階で正確でないために、指導の手立ても誤っているということが少なくありません。
知識は、適切な指導を組み立てるため、というよりは、誤った指導をしないため、というニュアンスの方が重要です。
誤った指導は、変な癖を逆に定着させてしまったり、改善を遅らせる結果になります。
今度、側音化構音の指導についての講義をすることになっています。
側音化構音(そくおんかこうおん)とは、例えば、「キ」が「チ」のように、「ギ」が「ジ」のように、「リ」が「ギ」のように、「シ」が「ヒ」のように、イ段の音が歪んでいることを言います。
エ段や、たまにサ行、ザ行でも見られることがあります。
「キリギリス」が「チギジギス」などのように、聞き手にとってはわかりにくいです。
特に、それらの音を含む固有名詞、人の名前など、聞き手が初めて聞く単語では、困り感が生じることがあります。
子どものうちは問題ないと思われても、思春期に入ってから悩む当事者の方も少なくありません。中学生以降では、側音化構音を指導してくれる機関はほとんどなく、成人してからは仕事で忙しいなどの理由で医療機関を受診することも難しくなります。
話しことばに困難があるというのは、周りの人の想像以上に、本人の困り感が実は大きくなりやすいのです。
今回の研修会にあたって、事前に質問のアンケートをとったところ、構音検査の仕方を教えてほしいというのがありました。
新しい先生方は、側音化構音を含めた歪み音の指導の仕方という以前に、そもそも構音障害とは何か、どのように評価をしたらいいのか、というところで迷われています。
その意味で、短い時間の中で、いきなり歪み音の指導というのは難しいと思われました。
ただ、歪み音の中でも、一番接することが多いのが側音化構音であることも事実です。
きっと、指導に苦労されている先生も多いと思います。
歪み音の中でも、機能的なものと、器質的なものとがあります。
発語器官に外科的な問題はないのに、原因がはっきりしないものが機能性。
鼻咽腔閉鎖機能不全などにより、代償として歪み音を学習してしまう器質性の歪み音もあるでしょう。
歪み音の原因に、器質的なものはないか、検査して除外する必要があります。
ケース会議の中で、たまに器質性の歪み音を疑う場合があります。
鼻咽腔閉鎖機能を確認する検査としては、わずかの水を入れたコップにストローを差し、ブクブク吹かせたときに、鼻から息漏れがないか、鼻息鏡で確かめます。
たとえば、吹きはじめは問題ないが、数秒後には漏れ始める場合には、閉鎖が時間的に持ちこたえられない可能性があります。
ブクブクでは問題がなくても、例えば「パパパパ」と発声したときに、鼻に鼻息鏡を当てると、鼻から息が漏れている場合があります。
最近は昔と違って、口蓋裂がある場合には、口腔外科と言語聴覚士、矯正歯科などとの連携が取れ、就学までに構音指導も含めて受けてくることも多くなりました。
ただ、口蓋裂がなくても、軟口蓋を持ち上げる筋力が弱かったり、閉鎖のための穴が大きい、などの理由で、閉鎖がうまくいかないこともあります。
器質的に問題が見られない場合は、機能性を疑うわけです。
いずれにせよ、鼻咽腔閉鎖機能が不十分なままでは、いくら舌の動きを練習しようとしても、付け焼き刃的な指導にしかなりません。
と、ちょっと、歪み音の評価のことを書いただけでも、結構な分量になります。
(6月17日追記)
『口蓋裂の言語臨床 第3版』医学書院 岡崎恵子他著によると、
***
鼻咽腔閉鎖機能不全と関連が大きい構音障害
1 呼気鼻漏出による子音の歪み
2 声門破裂音
3 咽頭摩擦音
4 咽(喉)頭破裂音
鼻咽腔閉鎖機能不全と関連が小さい構音障害
1 口蓋化構音
2 側音化構音
3 鼻咽腔構音
4 構音発達上にみられる構音の誤り
5 その他の置き換え、省略、歪み
(p35)
***
とありました。
よって、mijukuさんの書かれたとおり、鼻咽腔閉鎖機能不全が原因で
側音化構音になるという因果関係のような書き方に、ブログはなっていましたので、
訂正します。
***
スライドの内容と全然違ってしまいましたが。
『ことばのテスト絵本』は選別検査です。
つまり就学時健診などで使うもので、構音障害の有無を判断するためのものです。
より詳しく検査し、予後の推定、指導の手立てまで考えるには、「構音検査(改訂版)」など、「構音類似運動検査」を含む詳細な検査をする必要があります。
ペンライトは、口の中を見て、発語器官に器質的な問題はないか、構音時の舌の動きはどうなっているかを見るために使います。
録音機器は、子どもが緊張しないように、マイクを目の届かないところに置くなどの工夫が必要です。かといって、遠すぎても正確な音がわからないので、私は机の横に外部マイクを貼り付けて、録音機器本体は、目の届かないところにおいています。
ワイヤレスになると、さらによいのでしょう。
聴力障害を疑う場合は、聴力検査も行います。
就学時健診用の2つの周波数だけ測れるものでもよいかもしれませんが、より詳細に、語音との関係を検討するには、詳しく検査できる機器の方がよいでしょう。
「ひらがな表」は、文字の読める子で、既に発音の誤りを自覚し、検査者と気軽に、構音について話し合える場合に使用します。
「このなかで、言いづらいのはある?」と尋ねます。
本人の自覚と、実際の構音検査の結果とが異なる場合が少なくありませんが、本人がどう感じているかを把握することも大事です。
遊具は、検査前後に使用し、子どもとのラポートを形成します。
子どもとのラポートが取れていない段階で、口の中を見せてもらうことなどできません。
また、検査後にも遊ぶことで、「楽しかった」で終われるようにします。ことばの教室への通級になった場合に備えて、そうした気持ちで終われることが大切です。
ことばの教室は楽しいところ、という気持ちが友達に伝わることも大切です。
***
構音検査で、よくありがちな間違い
1)会話レベルだけで判断してしまう。あるいは、特定のレベルだけしか検査していない。
→聞き取りにくいことは特にありませんでした、で終わることがあります。
たまたま、該当する音が、会話の中で登場しなかっただけかもしれません。
あるいは、検査者自身が、会話の内容に夢中になり、聞き取りにくかった瞬間を覚えていない場合もあります。
文章の音読だけで終わらせる検査も見られます。
単音節、無意味音節、単語、短文、会話の全てのレベルでどうなのかが大事です。
2)歪みと置き換えの鑑別ができていない
→「キ」が歪みなのか、それとも「チ」への置き換えなのかの鑑別が大事です。
そのためには、舌の動きを見ること。
もし「チ」は問題ないのなら、「キチキチ」と交互に言わせると、「キ」が歪みなのか、置き換えなのかがわかります。
3)一部の音だけしか検査していない。
→よく、「イ列の歪み」という報告があります。「では、エ段はどうですか?」と尋ねると、「調べていません」ということがあります。指導の手がかかりを把握するために、主訴以外の音も含め、全ての音、関連する音を検査することが、詳しい検査時には必要です。
4)音を聞くだけで、舌の動きを見ていない
→構音検査は、「聞いて、見て、触って」が大事です。
5)構音類似運動検査を行っていない
→指導の手がかりや、予後の推定(自然に改善するか)などの判断のために、構音類似運動検査は大切です。たとえば、「カ行」→「タ行」の置き換えの場合、口を開けたまま「ンー」が言えるかどうかなどです。
このペースでいくと、60分で話しきれる内容ではないとわかります。
もっともっと、時間がほしいところです。
子どもを守るために、あえて波風立たない方向に舵を切ることもありました。
時が解決してくれるだろうと。
自分の担当の子だけは守ろうと。
そうしているうちに、それが内外に認められ、結果として良い方向に行くのでした。
でも、解体的出直しが必要な時もありました。
その時は強い痛みを伴いますが、必要なことだったのだと思います。
17年もやっていると、色々ありました。
でも、不正はやっぱり許されない。
ヒトは弱いから、印象で判断してしまう。
そのことを繰り返し味わってきました。
だからこそ、失敗は失敗と素直に認める自分でありたい。
結果やデータは誇張したり、ゆがめず、まっすぐに認める自分でありたい。
「いいことは自分の手柄、悪いことは他人のせい」の不安から自由な自分でありたい。
・WISC-3→WISC-4
・K-ABC→KABC-2
・津守・稲毛式→KIDS
・S-M社会生活能力検査→ASA
何十年も前も検査を用いるということは、その時代の知能モデル、その時代の子ども達、その時代の社会性等を元に測っていることになります。
WISC-3を「言語性」「動作性」だけで解釈する向きはだいぶ減り、4つの群指数が重要であることは認識されてきましたが、
1)算数が「短期記憶」の指標になるというのは時代錯誤であること。(短期記憶だけなく、様々な能力が関与するから)
2)そもそも「短期記憶」だけでなく、聴覚的な「ワーキングメモリ」が重要であり、WISC-3では、ワーキングメモリを測れていない。「逆唱」がワーキングメモリを測っている、という説明がかつてありましたが、4の方がより「ワーキングメモリ」の概念に近づいたと言えます。
3)「絵画配列」は、社会性を測る検査として根拠がないこと。
4)「注意記憶」は、ADHDの指標にはならないこと。そもそも「注意転導性からの解放」という概念自体がどうなのか、と問われていること。
5)下位検査間に統計的な差が有るときは、IQや群指数の解釈は慎重でなければならないこと。
6)「知覚統合」→「知覚推理」に変わった哲学的意味を確認すること。
WISC-3は、「知覚推理」を測っていない。「視知覚」は測っているかもしれませんが。
「目でみた方がわかりやすい」の根拠として、「知覚統合」を用いるのはいかがなものか。
7)「迷路」が「先を見通す力」というのは、科学的根拠として用いられず、ゲーム世代には「慣れ」もあり、4では廃止。
8)WISC-3時代に見られた「プロフィール分析表」は、科学的根拠がないこと。
そして、何よりも、数値だけではなく、検査時の行動観察、子どもの実態、ストーリーと付け合わせて解釈されなければならないこと。
小さい子ほど、その時の気分やコンディションによって、結果が大きく変わる可能性があること。
WISCは、3から4に変わった際、RTIモデル、「検査無用論」に対応するため、科学的根拠をしっかり検討し、CHCモデルとの相関性が高いことを統計的に説明し、理論的基盤を固めています。
よって、3を用いる場合は、これら3の弱点をしっかりととらえた上で解釈しなければなりません。
本来であれば、4にすぐにでも移行すべきです。
そして、検査時の行動観察は重要ですが、その行動が、日常でも同じなのかを確認する必要があります。
検査時にたまたま、かもしれないからです。
検査時の行動の特徴をもって、いつもそうだと解釈するのは危険です。
ただ、数値だけでなく、行動観察と付け合わせて解釈することが重要なことには変わりありません。
S-M社会生活能力検査は、今の時代に合っているかと言えば、時代遅れの感が否めません。
年齢によって、ASAが適用できない場合には、従来通りS-Mを活用することはありますが。
津守・稲毛式も、同様です。
田中ビネーのIQと、WISCのIQとは、全く別のものですから、単純比較はできません。
田中ビネーのIQは、13歳までは正規分布ではなく、精神年齢/生活年齢×100で導かれます。
田中ビネーの場合は、IQよりも、精神年齢、基底年齢が重要です。
ただ、マニュアルを読んでわかるように、標準化作業の過程で、下位検査ごとに、課題を解けている子のパーセンテージが違っています。
中には5割を切るものもあります。その問題ができないからと言って、「年齢相当に達していない」と解釈するのはいかがなものでしょうか。
そして、一般に、田中ビネーの方が、WISCに比べて10ポイント高めに出ると言われますが、それはIQ水準別により異なっている、というレポートも出ています。
一方、WISC-4、KABC-2、DN-CAS、PVT-Rは、同じ標準得点法を用いて計算されます。
だから、比較が可能です。PVT-Rでは、IQは出ませんが、評価点は出ます。3きざみで1SDであることは同じです。
検査を行う上では、これらの基礎知識をしっかり踏まえなければなりません。