ハンドルネーム ya
某公立学校通級指導教室担当教員
言語聴覚士
特別支援教育士(S.E.N.S)
性別 男
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・場面緘黙のある子に、「家では話せるのに、どうして学校では話せないのだと思う?」と問う。
・難聴のある子に、一音ずつ区切って、大声で話しかける。
・イ列音が一貫して歪みのある子に、正音をひたすら聞かせて、正しく発音させようとする・・・。
これらは全て誤った対応です。
基礎知識があれば、回避できる誤りです。
通級を初めて担当する先生に、「知識を学ぶより、人生経験を積め」とアドバイスする「ベテラン」がおられるようですが・・・。
確かに教師に人生経験は大切です。
豊かな人生を経験した方が、もしかすると、若いときに悪さをいっぱいした先生の方が、深み、幅があっていい、と感じることが多々あります。
しかし、人生経験だけでは、上記のような誤った対応は防げません。
知識と技術も、人生経験と同じように大切なのです。
だから、新人への基礎研修は、ベテランの先生が保障しなければなりません。
今年度一年を振り返って
赴任一年目ではありましたが、従来の考え方、やり方について改革を提案、実施してきました。
1 教育相談のあり方の改変
(1)アセスメント情報の収集のあり方について
→発音が主訴だから発音だけ検査するのでなく、生まれてから今までの生育歴、学校生活の様子、幼稚園、保育園の引き継ぎ情報など、多面的、総合的に見立てる。
「行動観察、生育歴、標準化された検査」の3つ
(2)教育的判断の根拠の明確化
→アセスメント情報を総合的に判断し、おおよその支援の方向性を教育的に判断。
障害種は国が定める通級対象と照らし合わせ、科学的根拠に基づく判断へ。
教室独自の判断基準の廃止。
もちろん、国が定める基準通りにやるということだけではなく、障害の教育的判断にどんな根拠があるのかを明確にすること
(3)ことばの相談と就学相談との連携の強化
(4)教育相談報告様式の改変
→箇条書き的見立てから、論述的見立てへ
(5)マニュアル的自由会話から、その時、その場、面接者と子どもとの呼吸に合わせた自由会話へ
2 指導の改変
(1)マニュアル主義から、子ども一人一人の違いに合わせた指導へ
→コミュニケーションが苦手だから、SST、という本に書いてあることではなく、関わり合い、子どもの反応から読みとることへ。
(2)無根拠な指導から、科学的根拠に基づく指導へ
(3)言語発達遅滞のとらえ方。表出言語ではなく、内言語へこそ注目へ。
3 就学相談のあり方についての改変提案
4 保護者との連携強化
→子どもが何年も通っていて、今年初めて親が教室に入りました、という親御さんが何人も。
特に参観日など、保護者が来校しやすい日時に来て頂く等の工夫。
→個別の指導計画を保護者と話し合い、指導の方向性について共通理解に立とうとしてきました。
***
これらの取り組みの結果かどうかは別として、今年度、
教育相談件数は昨年の2倍強。(もうすぐ3倍に)
就学時健診、就学相談と、ことばの相談との連携、情報交流により、より適切な就学相談へ
定期に通う通級児童の増加
につながりました。
今後の課題
1 乳幼児部門と学校教育とのスムーズな接続、早期の相談体制
→アンケートで、約3割の保護者が、もっと早く支援につながりたかったと回答。
教室啓発の強化。
2 就学相談体制の抜本的な改善、特に研修の強化、保護者、本人の立場に立ったシステムへ
3 担当教員の専門性の向上
4 人事面
5 物理的環境面
6 仕事内容の選択と集中(なくてもよい仕事は思い切って廃止。必要な仕事(指導時間の確保、指導内容の充実、保護者との連携強化)に労力と時間を重点配分へ。仕事分野の整理統合
7 教室運営計画を「使える計画」へ。
3、4は、私一人の力ではどうにもならないわけですが。
当教室では、教育相談の面接での検査だけで、子ども理解を終わらせようとはしません。
相談システムを大幅に改変し、面接前までに、関係機関から様々な情報を収集し、生育歴についても予め保護者に書いて頂き、資料が全てそろった中で、相談当日を迎えるようにしました。
そうでなければ、必要な検査の選択ができないし、子どもの全体的な理解につながらないからです。(もちろん、情報収集は、原則として保護者の同意のもとで行います)
不必要な情報も収集してしまうのではないかということを危惧するよりも、必要な情報を収集し落とすことの方が、はるかに問題です。
そして必要な情報かどうかの判断は、あとになって変わる可能性もあります。
基本的な情報収集をしてから、面接当日に臨むことです。
正確な支援につなげるためには、正確な子ども理解が必要です。