ハンドルネーム ya
某公立学校通級指導教室担当教員
言語聴覚士
特別支援教育士(S.E.N.S)
性別 男
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情緒障害(場面緘黙)
家では話せるが、学校で話せない小2女児。もっとも適切な指導はどれか。
1. 話せるようになるまで、学級の前で発表の訓練を行う。
2. 学級で順番に当てるとき、本児の順序は抜かすようにする。
3. ことばを先取りしてきた親の対応が原因なので、甘やかさないお願いをする。
4. 本人が安心できる人、場所、活動内容を保障し、徐々に難易度を上げる。
5. 「家では話せるのに、どうして学校では話せないのかな」と本人に質問してみる。
***
1
家では話せるので、話す能力に問題があるわけではありません。
よって、「訓練」によって「改善」しようとするのは、原則として適切とは言えません。
ただし、決まった発表内容だと話しやすい子もいるので、全く誤りとは言えないかもしれません。
いずれにせよ、本人の気持ちを第一優先にすべきではないでしょうか。
2
順番を抜かすというのは、本人にとっても、周りにとっても不自然だし、傷つくのではないでしょうか。当てられたら、指さしなど非言語的な手段で答えられるような発問にする、発表が難しい場合は先生に合図する約束を予め本人と話し合って決めておく、などの工夫が考えられます。
3
場面緘黙は、親が甘やかしたことが原因ではありません。
そもそもそうなりやすさ、素因があるのです。
5
本人に聞いてもわかるはずがありません。
余計な心理的な負担を与える質問は、しない方がいいでしょう。
周りの子はみんな、他の子とダイナミックに会話したり、関わったり、難しい言葉を使ってコミュニケーションしていました。
それがとても怖かったです。
幼稚園の夜の行事で、グラウンド(園庭)で盆踊りをしている中に入るのがとても怖かったです。
幼稚園か、小学校低学年の頃は、みんながどうしてこんなにたくさんのことばを知っているのだろう、自分だけは、何か習っていないこと、行ったことがないところがあるのではないか、と思っていました。
年に一度の大型花火大会では、怖くて一人で泣いていました。
周りの大人は「こわくないしょ。きれいでしょ」と言うのですが、恐怖心は強まるばかりでした。
歯からわずかの出血があっただけで、死の恐怖を味わいました。
自分の子どもの頃をあのとき、思い出しておくべきでした。
ごめんね。無理させて。
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『場面緘黙Q&A』かんもくネット著、2008、学苑社
http://www.gakuensha.co.jp/cn27/pg346.html
「かんもくネット」場面緘黙児支援のための情報交換ネットワーク団体
http://kanmoku.org/index.html
「Knet資料」には、保護者や学校の先生向けのパンフレットもあります。
就学を控えた、場面緘黙のあるお子さんのために、役立つのではないでしょうか。
*
ひとつ、実話を。
入学式後の学級。
私は新入学担当の係として、ドキドキしながら、遠くから見守りました。
新1年生に一人ずつ名前を呼んで、返事してもらう時間でした。
たくさんの保護者が教室内を埋め尽くし、机には真新しい教科書の山が。
この上ない緊張感に包まれていました。
先生は一人ずつ名前を呼んでいきました。
元気なお返事がたくさん聞かれました。
そして、その子の番。
「○○さん」
やっと起立した○○さん。
しかし、予想通り、お返事はできませんでした。
祈るような気持ちでした。
通常であれば、
「ちゃんと返事をしなさい」
とか、
「次は言えるようにね」
と声かけするでしょう。
しかし、そのとき担任の先生は、おだやかな笑顔で、予想もしないことばをその子にかけたのです。
「○○さん、立ってくれてありがとう」
私は涙を抑えるのが精一杯でした。
こちらこそ、子どもを理解してくれてありがとうと。
本人も、親御さんも、どれだけほっとしたことでしょう。
「話さない」のではなく、「話せない」のが場面緘黙という障害です。
このことが理解されずに、「話さない」ために罰を与えられ、かえって人間不信に陥る事例が後を絶ちません。
支援のためには、まず理解なのです。
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『こころの科学』 2012年9月号『トラウマ』によれば、トラウマの治療法として、認知行動療法をベースとしたTF-CBTというものがあるそうです。
トラウマを体験した子どもは、自分の状況を理解できなかったり、自分を責めたり、感情が麻痺したりします。
この治療法では、「自分だけではない」とか、感情に名前をつけるなど、認知面にアプローチしたり、呼吸法や筋肉の弛緩などのリラクゼーションスキルも学ぶとのこと。
欧米のいくつかの疫学調査では、一般人口におけるトラウマ体験率は40~80%だそうです。
でも、大部分は病理的な症状を示さないか、示しても一過性。ただ、一部はその後の人生においてもトラウマを体験するリスクが高く、長期的に社会生活や健康面に影響していく場合があります。
また、トラウマによる「解離」が起こるかどうかは、愛着、養育者との情緒的な関わりの有無とも関係があるようです。
ただ、特別支援教育の臨床で、子どもの心の傷を発見するのは難しいです。幼少期にそれがあったとしても、その心をのぞいて見るわけに行きません。
しかし、子どもの行動観察や周辺情報から、心の傷という観点で見ていった方が、理解する上で整合性がとれると思えるときがあります。
実は大人でも、支援者の立場の方々にもそれを感じることがあります。
発達障害という切り口だけでなく、社会的立場というだけでなく、様々な観点で子ども、大人を見つめる必要を感じます。