ハンドルネーム ya
某公立学校通級指導教室担当教員
言語聴覚士
特別支援教育士(S.E.N.S)
性別 男
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●大会企画シンポジウム「成人した発達障害の現状 ~生きる力をはぐくむ就労支援と継続 ~ディスレキシアの場合~
LDの当事者団体のご本人6名がフル出場する発表会でした。
日本では読み書きができないと挫折感を味わうが、アメリカやイギリスに留学すると、長所を生かす教育が徹底しているため、自己肯定感が向上し、才能を伸ばすことができたという本人の話が紹介されました。
指定討論者の梅永雄二先生は、「某チェーン店では、LDのある店員には、読み書きの必要のない仕事を与え、ADHDのある店員には小刻みに休憩できるように配置するなど、個に応じた配慮をしました。その結果業績が伸び、他の店舗も次々と追随するようになりました。」
とおっしゃっていました。励みになります。
また「発達障害に特化した自動車教習所もあります。指導者がいればできるのです。就労支援では、わかってくれる指導者の配置をお願いするなどしています」
という話から、できることを一つ一つやっていくしかない、という姿勢に感銘を受けました。
「文字が読めなくても、仕事と直結しなくてもいいから、何か好きな趣味を小さいときから持つことが大切です。つまらない仕事でも、好きな物を手に入れるために働けます。働くとはそういうことです」
この言葉も、とにかく勉強させて有名企業に、と走りがちな関係者に、本当に向かうべき路線を示された思いでした。
「挫折を克服できたきっかけは?」という当事者への質問に対しては、「同じことで悩む仲間を見つけること」、「逃げて落ち着ける場を作ること」などと答えていたのが印象的でした。
NHK 大人の発達障害 シリーズの録画をやっと見終わりました。
悩んでいる当事者へ、別の当事者がコメントしています。
そのコメントは、とても説得力があります。
そして、その内容は、他の人にも参考になることだと思いました。
1
自分が発達障害者であるという境遇をどう受け入れたか
→「周りの人と同じになりたいと思うことは、
逆に自分を追い詰めることになる。
みんなと同じになろうとするのでなく、
自分の個性を大切にして、世の中で活躍できることを見つけること。」
全くその通りですね。
そして支援者である側も、子ども達を周りの子と同じくできるように
しようとしてはいないでしょうか?
それは、本当に支援になるのか?
と我が身を振り返りたくなりました。
また、テンプル・グランディンは、
「自分の役割を見つけてかわった。仕事に打ち込むことで乗り越えた」
とおっしゃっています。
特別支援教育に関する民間を含めた活動に熱心な関係者の中には、
こうした方も決して少なくないのでは、と時々感じているところです。
自分を含めて。
2
「家族から理解されない」悩みについて
→親と距離をおく
「人生の主役とは、『親がなってほしい人間』ではなく、『自分がなりたい人間』になること」
→「夫婦関係では、わかってほしいという思いを捨てて、
気にしないようにしていたら、逆にうまくいく」
これもとてもよくわかります。
家族とは多くの時間を過ごすので、コミュニケーション等で日常生活に
様々な困難、苦しみが生じます。
でも、わかって欲しいとか、なおしてやろう、見返してやろうなどと思っていると、
ますますうまくいかなくなります。
ここは、セルフヘルプグループに通うなどして、
自分が元気にくらしていき、
家族を気にしないようにしておけば、
逆にうまくいく、ということです。
あるお医者さんが、「家族は、良い意味でのあきらめが大切」
とおっしゃっていたのを思い出しました。
3
「人づきあいの悩み」
→「好きな美術や歌を一生懸命練習して、人付き合いもそこに集中するのがよい」
→「好きなことは、息抜きのために重要。
これからの人生、発達障害者はストレスをためやすいということもある」
好きなことに打ち込む、障害の有無にかかわらず大事ですね。
テンプル・グランディン: 世界はあらゆる頭脳を必要としている
http://www.ted.com/talks/lang/jpn/temple_grandin_the_world_needs_all_kinds_of_minds.html
こういう映像もネットで見られるようになって便利ですね。
私はテンプル・グランディンさんに、今から10年以上前に出会いました。
下記のセミナーででした。
セミナーの休憩中、ロビーでは『自閉症の才能開発』が販売されていて、
買った方にはその場で本人のサインを頂けるというイベントがありました。
既にその本は持っていたのですが、サインを頂くためにもう1冊買ったのでした。
ロビーでの人の動きをとても興味深そうに見ているテンプルさんが印象的でした。
***
第81回国治研セミナー『自閉症児の視覚的な世界
~ 自閉症の本人にきくその世界と療育方法~ 』
日 時 1999年8月9日(月)
場 所 日経ホール
主 催 国際治療教育研究所
講 師 テンプル・グランデン(Dr.Temple Grandin)
・女性は、更年期、生理前や産後に女性ホルモンの一種エストロゲンの急激な減少に伴ってセロトニンが減少する。その結果、気分が不安定、実行機能と報酬系の回転が悪くなる。
ADHD症状が七歳前から顕著でなくても、思春期以降女性ホルモンのバランスの悪化からADHD症状が出現したり、重度化したりすることもある。
(感想)→女性のADHDの理解と対応のために、こうした知識も必要ですね。特に幼少期から発達のつまずきがある場合、思春期以降に困ったことが生じるかもしれない、そのためにも幼少期からの生育歴をしっかりおさえ、引き継ぐことが重要と思います。
・「自分の言葉が他人を不機嫌にしているのがなぜか、自分でわからない」なら、そう感じたときの実際のやりとりを記録して持ってきてもらう。「こういう言い方は失礼にあたります」などとアドバイスする。
(感想)→直球で教えてあげた方がうまくいくことも確かにありますが、プライドが高い相手だと難しいこともあるでしょうね。ただ、遠回しに言ったり、比喩で言っても誤解されることが多いので、直球が基本かもしれません。ただ言う人と言われる人の信頼関係が大事なのは、障害の有無にかかわらず重要なのではと思います。
また、会話の断片のメモだけではわからないこともあるので、日常の人間関係もアセスメントが必要なのだと思います。
そして、会話がうまくいかないなどと大ざっぱなとらえ方でなく、実際の会話の内容を細かく丁寧にときほぐすということは、とても重要だと思います。
・アスペルガー症候群では、言語的で明示的な「心の理論」は通過するけれども、15ヶ月の幼児が通過するような、他者の信念に基づいた自発的な行動予測が全く行われない。
→(感想)「心の理論」を未だに自閉症か否かの判断材料に使っている向きがありますが、あれは言語で説明し、明示的ですから、解ける子は解けてしまいます。でも、本当の困り感は日常にごくありふれている、他者の行動の非明示的な意図の読み取りであって、誤解したり、被害者のように感じてしまうところにあります。
「読み取り」というより、他者の行動の経緯や背景の情報、経験などを併行的、総合的に動員してそこから推理するという過程が難しいのだと思います。
だから、その方にとって明示的な説明が必要ですが、逆説的な関わりや、行動のムラの多さに現れたりする二次的な困難がある場合、メンタル面をいかに支えるかも課題と思います。周囲の人も含めて。
・発達の凹凸があると、精神的変調が難治となる理由は、
(1)社会的ストレスへの脆弱性→できて当たり前のことができない、できている(わかっている)ふりをしなければならない、聞くと怒られるから聞くに聞けない、など、「ふつう」を常に演じ続けなければならないこと。
(2)心的外傷記憶の現在への侵入
→(感想)障害の有無にかかわらず、こうした状況に陥ることは、多くの人が体験することでしょうけれども、それがとても多くてつらい方がいらっしゃるのも事実と感じています。ありのままのあなたと私でOK、という世の中をどう作っていくか。やっぱり教育、療育ですね。
よこはま発達クリニックの内山登紀夫先生が、
『そだちの科学』NO.13 「おとなの発達障害」の
「成人期の自閉症スペクトラム」で書かれている主旨の一部について
感想を交えて載せてみます。
・発達歴を系統的に聴取することなしに、クライエントの状態だけで
診断を下すのは、端的に言って間違い。
→(感想)
特に成人の臨床の場合、発達障害という観点や、
過去の発達歴を聴取するということがまだまだ
遅れているようですね。
子どもの教育分野でも、診断を下すためでなくても、
子どもをトータルに理解し、支援に結ぶためには、
過去からの育ちを情報収集する必要があります。
・自閉症スペクトラム障害の基本障害は認知障害。
まずは認知特性から支援を考えることが重要。
→(感想)
物事のとらえ方が変わることは、行動も変わるために重要ですね。
行動面だけ見るのではなく、当事者が物事をどう感じているか、
とらえているかを各情報を根拠に想像することは、とても大事だと思います。
LDの心理的疑似体験が言うところの「内側からの理解」にもつながります。
他人の心などわかるはずがないという議論がありますが、
どうとらえているか科学的に想像することで、行動の説明ができたり、
実際に行動の変容につながるならば、その想像は妥当だったと言えます。
・認知の偏りから生じる不利益を最小限にするための工夫が必要
苦手な部分を正常に近づけるためではない。
→(感想)
認知の偏りが及ぼす影響は日常生活の多くの場面なので、
本人も支援者も疲労してしまいますが、
できないことをできるようにトレーニングするということに特化すると、
ますます疲れてしまいますね。
「折り合いをつける」
「良い意味でのあきらめ」
この視点が救いになります。
・統合失調型のパーソナリティー障害と、自閉症スペクトラム障害の特性の両方が見られた場合で、発達期にも三つ組み障害が明らかな場合は、自閉症スペクトラム障害の特性を考慮した支援方略を採用する。
受け身的で非指示的なカウンセリングはうまくいくことが少ない、混乱を招くことが多い。
→(感想)
性格の偏りと、発達障害との関係について最近よく耳にしますが、基本は発達障害の特性への支援なのですね。実感レベルで納得できます。
児童精神科医の杉山登志郎先生は、
『そだちの科学』NO.13 「おとなの発達障害」の
「成人の発達障害」の中で、「臨床的に重要と思われること」として、
以下の4点を挙げています。
主に医療的な対応ですが、発達障害の療育、教育にも内容的に重なる部分が多いです。
*******************************
1
発達障害の可能性を見逃さないためには、生育歴をしっかりとる。
本人だけでなく、親や子どもの様子も確認する。
2
トラウマ歴の有無の確認
トラウマが絡む症例の場合、トラウマの治療を優先する。
3
症状の把握。
幻覚は持続的な現象、フラッシュバックは一瞬の出来事
4
発達障害の基盤がある場合は、薬物療法は少量の組合せ処方を心がけるのが原則。
************************************
1について、療育、教育では、その重要性や学術的な根拠から、
既に行われています。
2について、教育的に「治療」はできませんが、「安心感」「楽しさ」を
優先した指導という優先順位の判断のために、重要な視点です。
3について、医療との連携のために、療育、教育にも必要な視点。
4について、たんなる気分の落ち込みなのか、他にどんな背景、
経緯があるのかで、教育的にも対応が違ってきます。
***
単なるADHDなのか、虐待系の多動症候群なのかということは、
私の出会ってきたケースでもよく検討することが重要と感じていました。
それによって、対応や優先順位が変わるからです。
実際には両方という場合もありますが、
それでも多角的に検証することは重要です。
またたとえば、ADHDと診断を受けていても、
物事の関係の理解などにも課題があるなど、
認知的な困難を伴っていることが多いということも感じています。
つまり、純粋に行動面だけ、という方は、子どもでも大人でも、
あまりいない、という実感です。
だから行動面の強化や修正だけの対応というのは、
必ずしも適切ではないことになります。
今の状態を映画の一コマのように切り取って
判断するというのは、対応を誤る可能性が高くなります。
今に至るプロセス、ドラマの理解が重要です。