ハンドルネーム ya
某公立学校通級指導教室担当教員
言語聴覚士
特別支援教育士(S.E.N.S)
性別 男
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「生きていても仕方がない」
とまで追い詰められる成人の当事者の証言は、涙なしには見られませんでした。
単に「かわいそう」ということでなく、共感ができるからです。
現に他校通級している男の子の「(笑われて)くやしかった」との涙の証言の映像も、見るのが痛々しく感じました。
でも、自ら吃音があり、医師をされている「吃音ドクター」の菊池さんと出会って以来、自信がついてきたというお話は感動でした。
当事者同士で顔を合わせることが、いかに勇気につながるかということ。
そうした場を今の場に作りたい、と数年来温めてきました。
現に通級してる親子や、教育相談でお会いした方々に打診したところ、そうした場を願っている方々が少なくありません。
今年、それが実現に向けて動き出しました。
やったことがないので、諸先輩のアドバイスや、あるいは直接的にお願いできないか調整しています。
言友会の方々ともコンタクトをとって、うまくことが運ぶことを願っています。
映画『英国王のスピーチ』
http://kingsspeech.gaga.ne.jp/
は、吃音についての支援者にはぜひお薦めの映画です。
レンタルビデオ店にもう置いてあるのですね。しかもかなり前から。知りませんでした。
DVDが出たら観たい、という方もいらしたので、ぜひ紹介しようと思っています。
姉妹品として、
『英国王のスピーチの真実』
というDVDもレンタル店に置いてありました。
http://www.gaga.co.jp/cinema_items/detail/530/lineup
吃音は言語障害のひとつで、構音障害、言語発達遅滞など、ことばの教室が本来対象にする障害の一つです。
「ぼぼぼぼくは」と出だしの音を繰り返すのを「連発」と言います。
「ぼーーーくは」と、出だしの音を伸ばすのを「伸発」と言います。
「・・・・・・・ぼくは」と、出だしの音が詰まることを「難発」と言います。
一般に、連発よりも伸発、伸発よりも難発の方が、症状が重いとされます。
また、手を振ってリズムをとってから発話するなどの「随伴動作」が見られることもあります。
目立たないように、手指をわずかに動かしてから発話する子もおり、検査時に見逃されることもあるでしょう。
吃音は発症してから3年以内に指導を開始した方が効果的ですから、ある程度症状が見られるのに、「様子を見ましょう」と何年もアプローチせずにいるのはいかがなものでしょうか。
また、検査場面ではそれほど症状が見られなかったから、様子を見ましょうというのも危険な判断です。
日常がどうなのかという情報は不可欠です。場面や状況によって、症状の重さや状態は変わる可能性もあり、時期によっても軽重の波があるからです。
また、昔は、症状については一切触れずに、環境調整をしていけば良いという実践が多かったように思いますが、最近は、「楽にどもる」方法を子どもと一緒に模索する、完全には「治らない」かもしれないが、より楽に、という方向に変わってきています。もちろん、幼児期の場合は環境調整も大事ですが、就学後では、もう一つプラスアルファーが必要です。
原因論については、昔言われた、「左利きを矯正したから」、などというのは科学的根拠がないことがわかっています。現在では、「もともとのなりやすさ」に、誘発要因が重なったときに出る、という多重モデルが採用されています。これは習癖と同じですね。また、吃音が出る子は運動が苦手だから、眼球運動だとか、身体全体の運動を鍛えることで症状が改善するという方もいますが、運動が不器用でない子も多いですし、そもそも、吃音には様々なサブタイプがあるのであって、運動をしたから症状が改善する、というとらえ方は単純にすぎる、と言えます。
さて、吃音の指導をさせて頂いて改めて感じることは、
1)吃音のメインテーマは「予期不安」であるということ。どもるかもしれない、という不安や緊張によって、余計な力が加わり、症状を誘発しているということ。先進的な研究をされている方も、「予期不安」こそは、とおっしゃっていて、納得です。
2)流ちょう性促進技法によって、「楽に言える、読める」体験を重ねること自体が自信につながり、予期不安の軽減にもつながっている。
3)特定のプログラムに固執するのではなく、子どもの反応を見ながら柔軟に対応することの大切さ。(これはどの障害、どの子に対しても言えることですね。指導するのはプログラムそのものではなく、”人”なのですから)
4)子どもと相談しながら、子どもの気持ちを尊重しながら指導することの大切さ。(同上)
5)子どもによって、「コーラス効果」(吃音のない人が一緒に音読、発話してあげると症状が改善する)が効果的な場合と、リズム法が効果的な場合とがある。
かつてDAF(聴覚的遅延装置)をパソコンのフリーソフトで擬似的に作って指導したことがありますが、そもそもDAFは「般化」に難があると聞いています。つまり、装置をつけているときは流ちょうでも、はずしたら・・・、ということです。
アメリカでは、DAFを補聴器のように持ち歩いて、人に見られても全然問題なく、ということのようですが、お国柄ですね。最近は、DAFにピッチを変える機能もつけて、自分の話したことばが、別人のピッチ音でフィードバックするので、「コーラス効果」により症状が抑えられるのだとか。しかし我が国ではまだそうした状況にはなく、私の指導の選択肢からは、はずれていきました。
リズム法では、「かーかーからすのかんざぶろう」という音読教材を使っています。
前任校で手に入れたのですが、出典がわかりません。
もうひとつ、図書館で子ども向けの川柳についての本を借りてきました。リズム法として使えるのではないかと思案中です。
保護者だけでなく、職員や行政の方も多く見えた研修会でした。
パネルディスカッションでは、教育局の先生から、管内での特別支援教育の取り組みについてのお話がありました。吃音のセルフヘルプグループの代表の先生からは、吃音の当事者の視点に立ったお話。そして、広域支援コーディネーターの先生からは、「ICF」(国際生活機能分類)の概略についてのお話がありました。
この中で、吃音の当事者団体の先生は、「吃音のある子どもの親は、吃音について親同士で話し合う相手もいない」、「先生から何でもないと言われると、それ以上相談できない」など、独自の悩みがあることを紹介しました。
また、「学級担任、言語担当は『吃音は治らないもの』との認識を持ち、他児と同じように対応してよいのか躊躇している」という現状の紹介。
そして、「職場の上司や同僚にとっての吃音」では、「仕事上、どうしても話すことが必要な場面でうまくいかないのは困る」などと、就労の厳しさが話されました。
次に、吃音者に対してすぐできる、しかも重要な配慮としては、「タイム・プレッシャーをかけないこと」。「吃音者が言いたいことを、話し終わるまで待つ。それだけでずいぶん助かるんです」との当事者のことばが紹介されました。
さらに、幼児、学童、中高生に対しての支援のあり方が具体的に例示されました。
学校教育でのことばの教室では、「症状に直接触れない。環境調整だけを行う」という傾向が強かったことを指摘。「卒業まで何のために通ったか、話し合わないうちに終わった」との当事者の声を紹介。症状について直接話し合ったり、話し方の直接指導も必要だと強調していました。
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『英国王のスピーチ』公式サイト
http://kingsspeech.gaga.ne.jp/
英国王の吃音をめぐっての実話(少し脚色したという情報もありますが)だそうです。
残念ながら、私の居住地では上映されませんが、見た方、ご感想をコメントに頂けるとうれしいです。
北海道言友会も推奨しているそうです。
http://www.geocities.jp/hokkaido_genyukai/
言友会推奨なら、まちがいないでしょう!
2
『ホクは吃音ドクターです』
菊池良和/著、2011, 毎日新聞社
http://www.7netshopping.jp/books/detail/-/accd/1103028058/subno/1
紹介してくれた方の感想です
「吃音を持っている著者が、子ども時代どんなふうに感じ悩んでいたか、医師になって吃音を研究する立場から、最新の吃音の情報も一般の方にもわかりやすく書かれていてとても良かったです。
吃音のあるお子さん、保護者、担当者皆さんにぜひ読んでほしい本だと思いました。」